「知的文章とプレゼンテーション」黒木登志夫著 中公新書 ― 2011/07/03 23:20
おもしろい。
世の中に文章論は数多い。著者の経歴を読むと、失礼ながらこのような本を書くようには思えないが、内容はまさに本書の主題のとおり、「簡潔、明快、論理的」である。
そして相当の地位にある方にもかかわらず、まったく飾らないのも好感が持てる。
ただし、本書における多くの著作の引用からも、著者の博学多才ぶりは推察できる。
本書の内容は、文章論から論文作成のポイント、日本人にとっての英語論、整理術、パソコン活用法まで多岐にわたっている。
あわせて、各章ごとにポイントを3行にまとめているのもわかりやすく好感が持てる。
本書を通じて多くのことが教えられる。これは、あくまで著者が体験的に得てきた技術であり、そこに説得力がある。
たとえば、
理系、文系の区別はない。大切なのは物事を筋道立てて考える論理的思考である。
また、主語がなく日本語は論理的でないというが、論理的に考え分析し仕事をするために、簡潔・明快・論理的という知的3原則を心掛けよ。
文章作成の極意として「起承転結」と言われるが、論理的な文章としてはむしろ「転」は展開の「展」とすべき。
などなど。
一方で、プレゼンテーションツールとしてのパワーポイントの悪い使い方の事例として、官公庁が作成した図が掲載されているが、体験的にも肯ける。
さらに追記として、東日本大震災後の政府、東電、原子力保安院の国民に対する説明は不十分であり、危機管理におけるプレゼンテーションの大切さを述べている。
本書は、主に論文を書く学生、逆にこれらを審査する人を想定して書いたというが、それだけではなくより広く一般的に報告書を書いたりプレゼンテーションをする社会人にも教えられることの多い本に仕上がっている。
繰り返し読みたい本である。
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