「東京電力失敗の本質」橘川武郎著 東洋経済新報社2012/01/10 20:41

本書は、以前から電力業界の経営史について研究をしていた著者が、電力業界の歴史を踏まえて福島第一原発事故後の電力業界の問題点と改革の方向性について検討を加えたものである。

電力会社の創世期は競争の時代であったが、戦時中の発送電については国家管理の時代を経て、
戦後は、GHQ体制のもとで9分割されたものであるが、当初は安定した電力供給と低廉な電力料金の両立が成立した。
これが石油ショックをきっかけとして、国の関与が強まるとともに各社間の競争意識は薄れていく。
その後の電力自由化論議についても、政府が原発推進に舵を切ることにより、東京電力中心の業界体質へと進んできた。
・この弊害が、今回の原発事故につながるというものである。
すなわち、東電側は国の設けた基準通りにやっているとし、一方国は東電にすべての責任を負わせようとする。
結果として責任の所在はあいまいなまま、賠償が行われていく。

以上を踏まえて、著者は地域分割をなくして電力市場を完全自由化する。原発は分離して国が管理するとする一方、戦時中の発送電分離の失敗から今議論されているような発送配電の分離には反対の立場をとる。
そして、東電はなくても問題はない、代わりに受け皿となる電力会社が現れればいい、とする。

本書での、各種電源の組み合わせによる系統運用という考え方は参考になる。著者のいうとおり、原発は徐々に減らしていくとともにその間再生可能エネルギーのノウハウを蓄積しつつその比重を高めていく戦略が妥当なところかもしれない。

いずれにせよ、もはや東電はいらない。

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