「世界史を大きく動かした植物」稲垣栄洋著 PHP ― 2018/09/10 13:29
本書は植物と人類史について書かれた本であるが、実に面白い。そしてその視点がユニークである。それは、植物(本書に登場する穀物や野菜)がわれわれ人間を利用してその勢力を拡大して来たというものである。
例えば、コムギ。その祖先種は、ヒトツブコムギで、種子が落ちない特別種である。種子が落ちなければ植物は子孫を残すことができない。それを人類が食料として利用した。
加えて、人間はイネ科植物の茎や葉を食料にすることはできない。そこで草食動物に食べさせてその動物を食料にした。
こうして生まれた農業によって人類は人口を増やし、村を作り出し、村を集めて強大な国を作り出すようになる。富を持つものと持たないものには格差が生まれ富を求めて人々は争うようになる。
そしてコメ。戦国時代は貨幣が統一されていなかったが、徳川幕府の時代にコメ本位制が確立する。このため、江戸時代はこぞって新田開発に乗り出す。何しろコメは貨幣である。田んぼの面積を広げ、コメの収量を上げることがビッグマネーを生み出すビジネスであった。
さらにイネは、コムギに比べて優れた特徴があった。イネは作物の中で際立って収量が多い作物である上、連作が効くという特徴である。
また、ジャガイモは当初食料としては活用されず、寒冷地であるドイツで食べられるようになった。加えて、保存がきき豊富に得られるジャガイモがやがて豚の餌となり、肉食が広まっていったという。
そして、アイルランドの悲劇は有名であるが、この大飢饉によって食料を失った人々が新天地のアメリカを求めて400万人もの人々が渡った。彼らが、いたから超大国のアメリカが生まれたといっても過言ではないという。その証拠に多くの大統領がアイルランド系であるという。
さらに、ワタ。南北戦争は、ワタの産地で急速に経済力をつけていった南部と、イギリスから輸入される工業製品に高い関税をかける保護貿易を行いたい工業化しつつあった北部との間で、行われた戦争であるが、リンカーン大統領は奴隷解放宣言を出すことによって、イギリスがアメリカ南部を支援させないようにするという戦略だったという。
世界四大文明は、主要な作目と関係しているが、唯一残っている中国文明は、コメとダイズであった。そして残った理由が、コメは連作障害を起こさず、ダイズはマメ科の植物で地力を回復させるという特徴を持っていたからだとする。
また、三河武士の赤味噌、武田信玄の信州味噌、伊達政宗の仙台味噌のいずれも戦陣食として作られたものであるという。
最後はトウモロコシ。これは、植物学者から見ると謎の植物であるという。ところがこれが、現在最も栽培量が多く、かつ人間が利用している植物であるというからおもしろい。
トウモロコシが人間を利用しているという著者の例えは全くその通りかもしれない。
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