「これから中国とどう付き合うか」宮本雄二著 日本経済新聞出版社2011/03/14 20:40

中国に関する書物は数多い。
特にここ最近では、尖閣問題に見られる強硬な態度やGNPが日本を抜いて世界第二位となったという報道を受けて、そのイメージは大きく変質しつつあるように思う。

本書は、最近まで中国大使を務めていた宮本氏による体験的中国観と、これからの日中関係の構築に向けての課題が示されている。

前半は、日中国交正常化に至る道のりと様々な外交上の課題とその課題の解決への道のりが示される。
そして後半では、ここ最近の特に日本の中国観の悪化を憂慮し、日中の経済バランスが拮抗しているこれからの時期が、日中関係に新たな安定と発展を与える機会となると主張している。

また、徹底した反日教育のきっかけは天安門事件への反省からの愛国教育であり、その意味で反日デモや日本への歴史問題は国内問題であると断じている。
ところが、中国共産党の統治の正当化への根拠の置き方がここへ来て変化が見られるという。抗日戦争で果たした役割から国民の日々の生活の向上へと変わっているという指摘は興味深い。

ながらく中国という国と向き合ってきたからこそ言える著作であり、安心感を持って読める。