「新しい労働社会」 濱口桂一郎著 岩波新書 ― 2009/09/19 03:54
ここ最近の雇用をめぐる問題は、名ばかり管理職、ホワイトカラーエグゼンプション、偽装請け負い、派遣切り、などなどいろいろなテーマで議論され、特に民主党政権では、製造業への派遣禁止などを最重要テーマとするようである。
本書は、これら労働問題を日本型雇用システムができていく歴史的背景からひもとき、欧米型雇用形態とどのように異なるのか、今様々な問題点が噴出する中で、どのように再構築していけばよいのか、深い考察を加えている。
パートやアルバイトの賃金水準はそれだけでは生活できないレベルのため、大きな社会問題となっているが、これは日本の正社員の賃金が生活給として位置づけられてきたことの裏返しであるという。この生活給という考え方の原点は、なんと戦時中の年齢と扶養家族数に基づく年功賃金制度であるというのである。
欧米では同一労働同一賃金原則がごく普通に成り立っているため、このような問題は生じていない。
今、派遣切りによって多くの派遣労働者が、失業保険からも排除されているのは、パートやアルバイトは家計補助であって、失業保険の対象ではないという戦後の考え方が今に至っているのである。
労働問題について考察を加えれば加えるほど、モグラたたきのような小手先の改革だけではほとんど解決困難な問題が山積し、日本社会全体の仕組みを大改革しなければ、明日は見えてこないのではないかと考えさせられる。
本書は、そこに大きな一石を投じている。
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