「グローバリゼーション」ジグムント・バウマン著 法政大学出版会2011/03/27 21:48

1998年に書かれた著作ながら、驚くほど今の世界を予測している。

まず、グローバル化によって、豊かな者はますます豊かに、そして貧しいものはますます貧しくなっていくというのが著者の見解である。 この現象を、サイバー空間へのアクセス、航空機などに見られる物理的な移動、人口的な都市空間、など様々な切り口から独特の見方で、読者に迫ってくる。

印象深いのは、 インターネット社会になってだれでも情報を発信できるようになったと言われるが、実のところ情報発信で影響力を持っているのは、ごく限られた人に過ぎないとしている。 また、この本が書かれた時代にすでに世界の富のうち上位300人で世界の45%ものシェアを持ち、世界人口の半数は、その5%の富を持つに過ぎないという状況になってしまっているという事実。 その貧困問題が語られるのは、食糧問題に歪小化され、解決の方向性はまったくみえないと指摘する。 さらに、新たに国連に加わる国々はもはや国家の体をなしていないともいう。

今世界中に見られる現象を、独特の視点で読み解いている。 様々な議論はあろうが、今この時代に出版された意義は大きい。