「老化の進化論」マイケル・R・ローズ著 みすず書房2012/05/27 04:17

進化生物学者である著者の自伝的エッセイ。
ショウジョウバエを使って「老化」について、革新的な発見をするに至る過程が、著者の生い立ちや弟の死、妻とのつらい別れなどの個人的なエピソードを散りばめながら、物語のように書かれて引きこまれてしまう。

著者の研究成果は、ユニークなものである。
すなわち、
「年老いた親の子に限定したショウジョウバエを使って新しい世代を作ることを何世代も繰り返すとハエの寿命が伸びる。」というもので、自然選択の力が老化を決定することを実証したものである。
さらに、
たまたま実験助手が、ハエに餌を与え忘れてしまったために、普通のハエが全て死んだのに対し長寿バエのほとんどが生き残るというストレス耐性を発見した瞬間(大発見にはつきものの偶然の失敗)のあたりはなかなか感動的である。
この大発見から、一定のカロリー制限が寿命の伸びに大きな影響を与えるという多くの実証実験につながっていく。

多くのエピソードと軽妙な文章もあって、楽しく読めた。

それにしても、沖縄の人々の長寿が農業生産性に乏しい地域性と戦後の厳しい食糧事情も相まってもたらされたことも紹介されているが、もはや若い沖縄人は西洋化した食事に変化してきており心臓病やガンの増加が見られるというのは何やら象徴的である。