「負債と報い」マーガレット・アトウッド著 岩波書店2012/06/17 06:22

2008年世界経済危機後の世界を「負債」という切り口で、文学者からの視点で見つめた本。

人類の起源から万能の交換手段として「金銭」が生まれたが、その始まりから「貸し借り」という制度もでき上がった。ここには、均衡という概念がなければ成り立たない。
ここを起点に本書では、「負債」を宗教における「罪」と関連させたり、債務者監獄、高利貸しなど金銭の貸し借りにまつわる負の側面に焦点を当てる。

そして本書のメインテーマが、最終章の「清算」である。
ここでは、「償い」という行為に焦点が当てられる。
例えとして登場するのが、ディケンズの描いたスクルージである。
彼は、仲間たちから金銭的な意味では債権者であるが、一方で道徳的には債務者であるとする。
そして、彼に資本主義の誕生から現在まで人類の行なってきた自然界からの収奪を見せて、ここから予想される未来を垣間見せる。
そう、お金だけあって食料も資源も消費し尽くした世界を。

経済学者からは見られない、新鮮な切り口で現代資本主義に警告を発している。