「マーケティングの教科書」DIAMONDハーバードビジネスレビュー ダイヤモンド社2018/03/15 05:37

本書はハーバードビジネスレビューに記載された論文から抜粋したもので、錚々たるメンバーが名を連ねている。もちろん、中身もしっかりしたもので、学ぶべきことも多い。

中でも印象に残ったところを抜粋する。
第2章クリステンセンによる「セグメンテーションという弊害」では、「市場セグメンテーションは、新進の若手マネージャーたちがビジネススクールで学び優良企業のマーケティング部門で今なお実践されている。しかしこれこそがイノベーションを恐ろしく勝算の低いギャンブルに変えてしまった原因なのだ。」として、毎年新発売される消費財の約9割以上が失敗していることを指摘する。
加えて、広告の多くが無益な結果に終わっているとし、「目的のジョブとそのジョブのために設計された商品特性を具体的に伝えること」が重要だとしている。

また、レビットは「マーケティング近視眼」において、デュポンとコーニングを例に、製品志向やR$D志向であると同時に、顧客志向に徹していることがその成功要因であるとする。「産業活動とは製品を生産するプロセスではなく、顧客を満足させるプロセスであることをすべてのビジネスマンが理解しなければならない。」

さらに、ライクヘルドによる「顧客ロイヤルティを測る究極の質問」が面白い。
顧客満足度調査において、その企業の利益成長との関連性が最も高いのはたった一つの質問であるという。それは、「この会社を友人や同僚に紹介したいと思いますか」であるという。成長のための究極の指針は、推薦者の正味比率なのである。

このほか、業績が悪化していたハーレーダビッドソンの再生のきっかけはブランドコミュニティの活用であり、かつそれは決してマネジメントやコントロールしてはいけない。とか、本題とは関連性が薄いが、「女性へのマーケティング」では、女性へのサポートが少ない国の第1位はダントツで日本で74%、反対にインドでは29%と最も少ないというデータは衝撃的である。
「女性のニーズを理解しそれに応えることが経済の再建に不可欠である。」という著者の言葉が日本に特に当てはまる。

最新のマーケティング理論が手軽に読める著作である。