「日本を救う最強の経済論」高橋洋一著 育鵬社 ― 2018/03/22 06:36
いつもユニークな視点から日本の財政政策、金融政策について切り込んでいる著者の最新の本。その筆の力には磨きがかかっている。
本書は、戦後の高度成長からバブルの発生、その後の長期景気低迷に至る事象の発生の原因を明かし、現在の経済政策による景気の回復に至るまでの財政金融政策の過程を論じたものである。
その論拠は明確で非常にわかりやすい。
すなわち、日本の高度成長はほとんど為替レートが円安だったためとし、日本人の努力と技術力で高度成長を成し遂げたというのは神話に過ぎないと切り捨てる。
そして、バブル時代のマクロ経済については、名目経済成長率は5〜8%、実質経済成長率は4〜5%、失業率は2〜3%、インフレ率は0.5〜3.3%と全く問題ないとし、単に資産価格が上がっただけで理想的な経済であったという。
これに対し、日銀の誤りは資産価格の上昇の原因に金融緩和があったと判断し、金融引き締めに動いた。その後2000年代まで金融引き締め政策は続き、これが失われた20年の原因であると説く。
さらに、政府債務についても、国の資産も考慮し日銀と連結してみるとネット債務は100兆円程となるとし、政府の財政状況はそれほど深刻に心配するものではないとする。
そして政府が取り組むべきテーマは、まずは失業率を下げ、雇用確保することが重要であるとし、その結果としてブラック企業が減り、賃金の上昇につながるとする。確かに現政権となってからの金融政策の結果、この通りになっているのだから説得力はある。
これまでの通説に真正面から切り込んでいきつつ明快に日本経済の分析と処方箋を説く本書の考え方には納得したい。
最近のコメント