「ドルはどこへ行くのか」ブレンダン・ブラウン著(春秋社) ― 2007/07/07 09:54
円がプラザ合意以来の低い水準にあるという。
円の金利が低く、円を借りて金利の高い国へ投資する円キャリートレードがその背景にあると言われている。
一方で、ユーロが歴史的に高水準にあり、ヨーロッパからの輸入品の値上げや、海外旅行時の交通機関の割高感などが話題になっている。
本書は、累増するアメリカの貿易赤字は、果たして持続可能かどうか、を主題に為替相場の動向の分析と、近未来の予測も織り交ぜた書物となっている。著者の分析は、第5章「アメリカ経常赤字の持続可能性」や第8章「為替相場とドルの未来」に詳しくあり、様々な多角的検討をおこなっている。
また、ユーロについては、第7章「ユーロを巡るゲーム」で触れられているが、著者のユーロの未来に対する見解はかなり懐疑的である。
興味深いのは、第6章「通貨外交の実態」において、ニクソンショック以来の日本の通貨外交の無策ぶりが見事にあぶり出されて、今にいたる日本経済の長期低迷の原因が見事に浮き彫りされている。
これと比較して、中国の通貨外交は非常に巧妙なものであり、日本との対比が鮮明になっている。
今の為替相場がどう形成されているのか、これからどのようになっていくのか、がよくわかる一冊である。
「生物と無生物のあいだ」福岡伸一著(講談社現代新書) ― 2007/07/09 15:19
マンモスがほぼ無傷の形で発見されたと言うニュースが流れてきた。DNAが取り出せれば、マンモス復活も夢ではないと言う。
このように、最近は「DNA」について、ごく普通に耳にする。犯罪捜査でも、今ではDNA鑑定が、重要な証拠とされるようになった。
本書は、このDNA発見に至る物語と、著者の実験を通じて得られた生命の不思議についての考察である。
科学の本とは思えないほどの美しい散文と、生命の不思議さがあいまって、引き込まれてしまった。
今われわれは、DNAの存在を何の疑いもなく理解しているが、その解明に至る物語は、実に遠く、多くの科学者の挑戦とひらめきと競争があってのものなのだと理解できた。
さらに、著者の研究テーマであったすい臓に含まれる酵素GP2や、プリオンタンパクを欠損させたマウスの実験結果から、生命は機械とは異なり、ある特定の遺伝子が欠落しても、見事にをれを補う仕組みを持っていることを示している。
これは、「生命とは何か」という難問にチャレンジしてきた人類の物語である。
「若き数学者への手紙」イアン・スチュアート著(日経BP社) ― 2007/07/16 17:48
本書は、表題のとおり著者が数学を志すメグという女性に当てて書いた手紙と言う形式をとっている。
数学の入門書でありながら、難しい数式は一切出てこない。しかし、数学の基本から最新の数学理論まで、実に興味深い。
「証明はなぜ必要か」とか「ユークリッドの公理」など、数学の基本的な話があり、フェルマーの最終定理の証明にいたる物語もある。
ゴールドバッハの予想と言われる「すべての偶数は二つの素数の和である」の証明は、コンピュータによって2×10の17乗までは検証済みであるにもかかわらず、いまだに見つかっていないと言う話や、ガウスが発見した素数の規則性の検証のスキューズ数という数値は1.4×10の316乗になるというがこれはコンピュータであっても検証不可能であると言う話など、数学の不思議さを感じさせる。
古典的な「角の三等分問題」がなぜ解けないのか。
πがなぜ3ではいけないのか。
などなど、数学の基本から奥深い問題まで、数学に触れているものにとっても、そうでなくても、実に興味深いテーマがちりばめられている。
数式を使わない数学の入門書であり、数学の奥深さが伝わってくる。
「少子化社会日本」山田昌弘著(岩波新書) ― 2007/07/17 17:02
あの「パラサイト・シングル」という言葉を作り出した山田昌弘氏による少子化問題へのアプローチである。
著者による少子化の原因は、フィールドワークから導き出されたものであり、実によく分析されている。
すなわち、現在の議論では、女性の社会進出に伴う仕事と育児の両立が伴わないことが原因とされているがこれに異を唱えている。
著者はあえてタブーとされている「魅力格差」、「経済格差」、「セックスの変化」の3つをあげている。
それに加え、欧米には見られない「パラサイト・シングル」が、さらに追い討ちをかけているとしている。
以上を踏まえて、少子化対策も著者独特のものとなっている。
現在言われているような、男女共同参画や出会いの場だけを作っても不十分であるとし、①「全若者に希望が持てる職に就け、将来も安定収入が得られる見通しを」、②「どんな経済状況の親の下に生まれても、一定水準の教育が受けられる保証を」、③「格差社会に対応した男女共同参画を」、④「若者にコミュニケーション力をつける機会を」という提言をしている。
今の政府による少子化対策がなんと底の浅いものかがよく認識でき、あとがきにあるように、第二次世界大戦における敗北のたとえが今の日本の少子化対策の重ね合わせられると、絶望的な気になってくる。
本書が、これからの少子化問題への軌道修正のためのきっかけになればと思った。
「貧困の終焉」ジェフリー・サックス著(早川書房) ― 2007/07/22 18:47
本書は、ハーバード大学で、わずか29歳で博士号を取得した著者が、ボリビアのハイパーインフレに立ち向かって、それを見事に解決したことをきっかけに、貧困問題に関わっていく物語である。本書を通じて、地球上の貧困をなくすためには、われわれ一人一人が意識して行動していくことが、何よりも大切であると感じさせてくれる。さらに著者は、様々な現場を歩いてきた体験から、通説とは異なる対処法をいくつも示してくれる。
例えば、貧困は、大国や多国籍企業が発展途上国の人々から経済的に搾取してきたことが原因とされている通説に異論を挟む。たとえば、バングラデシュの衣料工場の現場の労働環境は劣悪ではあるが、それでも女性たちの意識の変化や経済成長のきっかけになりつつあるのだとしている。
また、長い歴史からみて人類の経済発展の度合いが異なっていたために、相対的に貧しい国が生まれたのだとも言う。つまり、貧困な国も経済成長はしているのだが、先進国に比べての成長度合いが異なっていたために相対的に貧困になったのだとする。
とはいえ、著者は911以降のアメリカには徹底的に反対し、第二次世界大戦後の第一次大戦の反省から行われたマーシャルプランこそ、結果的に世界に平和と安定をもたらすものと主張する。
そして、今のODAをGNPのわずかだけ増やすだけで、貧困問題も、人口問題も解決するのだと結論づけている。
著者の体験に裏打ちされた提言がなされているだけに、実に説得力がある。
副題にもあるように、われわれが力を合わせて行動すれば、2025年までに必ず貧困は終焉するのではないかと感じた。
アドエス初体験 ― 2007/07/22 22:08
今まで、1年半使っていたW-ZERO3からの買い換えである。
W-ZERO3は、それまで使っていた、カシオペア(ウィンドウズCE1.0マシン!)と、ウォークマン(カセット+ラジオ!)と、京ぽんを一つにまとめることができ、人には髭剃りとバカにされながらも、大活躍してくれた機械である。
アドエスは、ほとんどW-ZERO3と何ら変わることなく、アドレスもアウトルック経由で、簡単に移行することができた。
以下は、元祖W-ZERO3とアドエスとの比較である。
(プラス点)
・軽量化。~手に持った感触もあのどっしり感がなくなった。
・スピード。~初代よりは、遙かにきびきび感がある。
・音量。~初代は、音量が小さく、最大値+インナーヘッドホンでようやく聞こえる程度であったが、アドエスは十分に聞こえるし、音質も心なしか向上している。
・キーボード。~番号キーが加わり、(esから加わったが私は使っていないのでアドエスがはじめて)
・キーロックが、一瞬でできるようになった。
・W+infoで、ニュースが自動配信になった。
・メモリ容量が大きい。
(マイナス点)
・ワイシャツのポケットからはみ出す。
・画面が小さい。高精細になっているのだろうが、初代に比べて、画面が小さく、爪でタップするにも一苦労。
・ボリュームがなくなった。サイトによっては、(たとえばNHKのイングリッシュニュース)いきなり大きな音量になるがこれをすぐに小さくできない)
・ロックの解除に、番号入力に加えて、ソフトキーを押す作業が加わった。
・WOAM(青耳)は思ったほどの効果はない。~いままでのSIMも、バージョンアップしていたので、切れにくくなっていた。
・意外にATOKが使いにくい。(慣れかもしれないが)
今のところは、こんな感想.だが、総合的には満足している。
まだ、今日一日の感想なので、これから逐次掲載していくつもりだ。
最近のコメント