「とてつもない日本」麻生太郎著(新潮新書)2007/08/05 17:11

 ここのところ、格差社会、高齢化社会、教育崩壊、都市と地方の問題など、さまざまな課題がわれわれの近未来に重くのしかかっている。
 
 そういった時代をめぐる風潮を、麻生太郎は、発想の転換で明るく見せてしまう。
 たとえば、ニートにはおたく文化やジャパニメーションなどを引き合いに出して、若者文化も捨てたものではないとしているし、高齢化社会については、老人にも社会参加をしてもらうことを提言している。さらに地方の問題については、三位一体改革を通じて、地方自治を進めることにより地方の底力を発揮していくべきだとしている。
 いずれももっともではあるが、具体策には欠ける。

 むしろ、このような人が今の日本の沈滞したムードを明るいものに変えて、日本全体を底上げしてくれるものと期待するような位置づけの本である。

アドエスとワンセグチューナー2007/08/05 22:31

 アドエス用のワンセグチューナーを購入した。
 インストール時に、電源がなかったので、パソコンのUSB給電にて行った。すると、インストールの最後にエラーメッセージが表示されて、アドエスのインストールが完了しない。
 何度やっても同じなのでこれはきっと電源の問題かと思って、社宅(東京)に行ってからインストールしようと思って止めた。

 私のアドエスの初期不良と思われる「設定」の表示の際にアイコンが消えてしまうことがあり、再表示のためにリセットをかけたところ、いきなりワンセグのソフトのインストールがはじまった。
 つまり、一旦リセットを書ければインストールができると言うことになる。

 アドエスでのワンセグ受信状況は、すべてのチャンネルが受信ができ、快適であった。
 ただし、平型プラグも一緒になっているので、コードがかさばる印象があり、電車の中での受信にはちょっと無理があるかなという感じである。

 いっぽう、この機械はパソコンのUSBに直接さして普通のUSBチューナーとしても利用できる。
 これも試してみたが、パソコンの機能が不十分なせいか、全くうまくいかなかった。

 以上から、このワンセグチューナーの利用シーンは、喫茶店などでの受信が主な用途と思われる。

「ブラック・ボーイ」リチャード・ライト著(岩波文庫)2007/08/11 16:53

 久しぶりに読んだ小説である。
 本書を読むことになったきっかけは、「医療崩壊」という本の中に、本書が紹介されていたからである。

 本書は小説というスタイルをとっているが、主人公が著者と同じリチャード・ライトであることからみても、明らかに著者の体験を書いたものである。

 主人公は4才、ミシシッピー州のとある農場の美しい場面から始まる。そこに描かれる自然は、その後続く暗い悲劇的な場面の連続は想像もできないくらい美しく叙情的に表現されている。
 しかし、父と母は離婚し、母が一家の家計を背負う頃から、つらい場面が多くなる。また、子供ながらに、白人の子供に黒人の子供が理由もなく殴られたことなどから、自分が黒人であること、そして黒人への扱いの理不尽さを疑問に感じていく。
 そうして、無理に無理を重ねた母が病気になり、おじのところに行ったり、宗教に熱心な祖母のところに引き取られたりと様々な体験を重ねていく。

 この物語を通じて、今の時代には想像もつかないような、黒人差別がこれでもかというくらいにでてくる。それも、黒人の子供のまなざしで。それは、黒人を一人の人間としてみなさず、まるで動物のように扱っている白人社会である。
 たとえば、生活費を稼ぐためにある白人の家庭で皿洗いや薪割りなどの仕事を始めたものの、古くなったパンとカビの生えた糖蜜を出されて食べずにいても「おなかがすいていないから」とウソを言わざるを得ない場面。衣料品店の配達でパンクした自転車を押していると、自動車に乗った白人が自動車のステップに乗れというので乗ったところ酒瓶を投げつけられて投げ出される場面。北部出身の白人が経営する眼鏡屋の従業員から、経営者がいない間に名前を呼び捨てにしたという言いがかりを付けられてやめざるを得なくなる場面などなど。

 そういう虐げられた中にもかかわらず、リチャードは、あくまでも自分の心に正直に、大人たちには迎合しようとしない。
 たとえば、学校を卒業するときに総代として演説するときの原稿を校長先生から与えられても、拒否をし、自分の考えた原稿を使うと言い張る場面。
 眼鏡屋の配達の仕事をしていてとある配達先に行った際に、であった北部出身の白人から、腹を空かせているだろうからと1ドルを渡されるがこれを断るシーン。また、宗教学校で前の生徒が授業中に食べていたクルミの殻を教師に注意されても、前の生徒が食べていたとは決して言わないところなどである。

 そして、あるとき職場の上司の白人に顔見知りの少年が自分をナイフでねらっていると吹き込まれる。相手に直接確認すると相手も職場の上司に同じことを言われたという。二人はこの問題を話し合い、けんかを避けようとするが、一人に5ドルずつ払うから拳闘のルールでやったらどうかという提案を相手の少年が受け入れ、まねごとでやろうというが結局本気になってしまう。悲しいことだが、白人の見せ物になってしまう黒人のやりきれなさを描き出している。

 彼の気持ちはただ一つ、人種差別と偏見の渦巻く南部を飛び出し、北部に向かうこと。
 そのために、メンフィスで出会った下宿屋の娘からの誘惑も断り、食事も切り詰め、銀行のロビーで新聞を読んで、わずかなチップも貯めて生活する。
 そういう中で、新聞に載った社説から、メンケンという人物を知り、図書館からこの作家の本を借りるために(なんと黒人は図書館を使うことができなかった)、一番安心できる職場の白人に頼み込んで、図書カードを借り、新たな世界を知ることになるのである。

 そうして、ようやく貯めた金で、病弱な母と弟を呼びシカゴへ旅立つシーンで終わっている。
 なんと、このときリチャードはまだ19歳である。

 これがわずか100年前の現実であることに改めて驚かされるとともに、我々が今この平和な時代に普通に生きていることが何と幸せなことか、改めて認識させられた。あわせて、黒人というだけで様々な差別や障害があるにもかかわらず、著者は知識への渇望から、これだけの迫真的な文章を書くまでになったということに、書物の大切さを感じた。

「医療崩壊」小松秀樹著(朝日新聞社)2007/08/13 04:37

 薬害エイズ事件や慈恵医大青戸病院事件などの医療をめぐる報道に見られるように、最近の医者や医療行政に対する不信感は、大きいものがある。私も含めて、ほとんどの人は報道のとおりに感じてきたのではないかと思う。

 本書は、直接患者と接している医者の立場から、日本の医療の現実と問題点をあぶり出している。

 著者が問題としているのは、まず一般人の感覚である、医者にかかればすべての病気は治療できる、生命は永遠であるとまで思うようになっている。しかしながら、そういうことはあり得ない。人間の体を傷つける医療には必ずマイナス点もある、としている。

 人間には過失はつきものである。医者も人間である以上過失は起こりうる。そういう過失さえも、今の日本の法制度上は、業務上過失致死という犯罪とする。この点については、薬害エイズ問題についての検証に詳しい。

 さらには、勤務医にとっての過酷な実態も描かれている。決して高くはない収入をもらいながら、厳しい労働条件で働いているが、理不尽な患者からの攻撃や訴訟リスクから、楽で安全で収入の多い開業医へシフトし始めていると言う。現実に、産科診療のできない病院の増加や、小児科診療の崩壊が起きていることを耳にする。

 医局制度にも鋭いメスを入れている。医局とは、医学部の教授を頂点として特定の大学の系列病院に医師を派遣する人事システムであるが、これを拒否するとその地域の病院には就職すらできなくなるというものである。医学部という日本の教育のトップレベルが志望するところが、こんな前近代的なシステムで動いていることに驚きを感じる。

 そういう中で、医療事故に関する対策として、スウェーデン方式を紹介している。スウェーデンでは、無過失補償といって、すべての医療過誤による被害者を救済するために費用を積み立てる制度であり、責任追及はここでは議論されない。今の日本では、裁判による方法しかなくかつ責任追求という形となるため双方に負担が大きい。

 さらに、日本のGNPに占める医療費は、国際的に見ても低いものであるとし、これ以上の削減は、日本の医療を危機に陥れるとしている。
 あわせて、日本のジャーナリズムの問題として、客観性を持たず感情論で自ら作り出した「世論」で報道しているという。医療を求める時だけ医師の合理性を求め、都合が悪くなると非合理で攻め立てる。まったく同感である。

 医療現場の荒廃は、想像以上に進んでいる。早急に手を打たなければ、大変なことになる。

アドエスとBluetooth2007/08/18 21:11

 アドエス用のBluetoothアダプタを購入した。
 早速、セットアップツールをインストールし、家のプリウスのG-BOOKで認識させようとしたが、パスコードを入力しても、それ以上の先に進まない。
 いろいろ調べてみたところ、ハンドセット、ハンズフリーのプロファイルには対応していないとFAQに書いてあった。
 残念ながら、G-BOOKで使うという目的は、不可能ということが判明した。

 仕方がないので、ワイヤレスヘッドホンでも購入してみることにする。

アドエスとUSB給電2007/08/18 21:20

 アドエスねたでもうひとつ。
 私は普段は社宅で付属のACアダプタを使用し、週末は自宅で、パソコンにつないでUSB給電による充電をしている。

 ところが、先週アドエスのバッテリーが完全に上がってしまった際に、USB給電をしようとしたがまったく反応しない。
 ウィルコムのサポセンに聞いてみたところ、どうも完全にバッテリーが上がってしまうとなんとUSB給電はできないらしい。

 ということで、対策としてはもうひとつACアダプタを購入するか、サブバッテリーを購入して持ち歩くかしかなさそう。

「銃・病原菌・鉄」ジャレド・ダイアモンド著(草思社)2007/08/25 10:38

変わった題名の本であるが、本書を読み進めるとすぐにその意味がわかる。著者が、あるニューギニア人から受けた、「現代の世界の不均衡はなぜ起こったのか」という疑問への答えがこの表題である。
 最もわかりやすいのは、スペイン人とインカ帝国の激突の場面である。馬と鉄製の武器は圧倒的な力の差となったが、それ以上に大きかったのがヨーロッパからもたらされた病原菌である。天然痘によって、人口の95%も減少したという。

 また、同じ人種でも、その土地の環境によって、社会の発展段階が全く異なる結果になるという。ポリネシアに広がっていったオーストロネシア人たちが、それぞれの島の環境に合わせて、寒冷な地域の狩猟生活から、ハワイに見られるような豊かな土地にできた王国まで、実に多様である。

 著者が主張していることは、今の人類の繁栄を築いているのはヨーロッパ系の人種であるが、これは「たまたま」ユーラシア大陸からもたらされた様々な農産物や人間に従順な家畜や、統一しなかった国々があった結果であって、条件さえ異なれば、他の人種がリードしていたかもしれないということである。

 不思議なことに、1500年頃までは、世界の最先端を行っていた中国が、なぜ停滞してしまったのか、それは、中国が統一国家であったためにたった一つの決定で、船団の派遣を中止し、そのころ始まっていた産業革命を禁じてしまったたことによるという。一方、ヨーロッパでは、政治的に統一されていなかったことが幸いし、新世界に各国が争って進出し、新たな技術を取り入れていった。このことが、それ以降の決定的な発展の差となっているという。
この指摘は実に興味深いし、これからの中国の行く末を暗示している。

 本書は、壮大な人類の今に至る進化の物語である。このような遠い過去を振り返ると、数千年単位の遠い未来へのヒントが見えてくる。

「資本開国論」野口悠紀雄著(ダイヤモンド社)2007/08/29 20:50

著者の専門分野である経済学の手法を駆使して、日本でデフレや「格差の拡大」がなぜ起こったのか、また最近の日本の抱える年金や消費税の問題、対外投資など今この国が抱えている問題点を、著者なりの独自の視点で鋭く分析している。

 まず、今の政府は企業減税により企業の活力を高めて日本経済を活性化させ、格差問題に対応しようとしているが、これは全く効果がないという。その理由を、経済学的分析で見事に示している。
 そもそも格差問題は、中国などの世界経済への参加によるグローバリゼーションによる世界賃金平準化の流れによるものであり、日本単独では解決策はないということになる。

 厳しいのは、少子化問題や年金、国の借金である。著者によれば、少子化問題はすでに手遅れの状態にあり、年金についても、残念ながらすでに破綻しており、とるべき対策はない。さらに、財政再建について、プライマリーバランスの均衡を目標とするだけでは何の解決にもならないと厳しい。

 また、日本はイギリスやアイルランドのように他国が投資しやすいような解放をすべきである。そして、資本大国となった日本は、アメリカ国債ばかりを買うのではなく、独自の判断で投資する必要がある。
 国には頼らず、自己責任で投資を行いリスクをヘッジしていくほかない。

 以上、著者の得意とする経済分析により、今の通説に対して歯に衣着せない反論を展開している。

 やはり国は頼りにはならない。これからは、自分のことは自分で対策たてて取り組むしかない。