「本当は怖いだけじゃない放射線の話」大朏博善著 ワック2011/05/01 12:42

福島県の校庭の放射線量の上限を20ミリシーベルトにしたことについて、議論が起こっている。  福島第1原発事故以来、放射線の話題は毎日耳にしており、われわれは必要以上に過敏になっている気がする。

このような中、本書は放射線に関する正確な知識を得るのに、最適な本といえる。

世界平均の一人あたりの年間に受ける自然放射線量は2.4ミリシーベルト。 自然放射線が平均より多い地域でがんの死亡率が低い。 ラドン温泉は自然放射線が出ている温泉だが、健康にはいい現象が明らかになっている。 パセドー病の治療には、ヨウ素131が使われる。 地表には1分間に1万個の宇宙からの放射線が降り注いでいる。 われわれの体には、放射線によって受けたDNAの損傷を修復するメカニズムが備わっている。 宇宙飛行士は、1週間の滞在で地表で受ける自然放射線の10~100倍の量を浴びている。 放射線のまったくない環境で育てるよりも、一定の放射線量の元で育てた方が生命の発育はよく免疫力も高まる。すなわち、低い線量の放射線は生命の維持には必須である。 広島や長崎の多くの被爆者の実例から、強い放射線を浴びたことによる遺伝性障害は見つかっていない。 などなど、我々が常識と思っていた用のことの多くが覆されていく。

もちろん本書では、放射線は危険なものではあり、正しく怖がる必要はあるとし、風呂のお湯の温度や薬の効果にたとえている。

「正しく知る」ことこそが大事だと感じた。