「日本の国会」大山礼子著 岩波新書2011/05/21 13:55

本書は、戦後GHQのもと制定された国会の仕組みと現在に至るまでの制度について詳細に検討しながら、そのモデルとされたアメリカやイギリスを始めとする諸外国の国会と比較しつつ、その問題点をあぶりだそうとしたものである。

この国で議論されてきた国会制度とモデルとされたイギリスの制度を比較するとこの国の議論がいかに狭い世界でしか見ていないことに驚く。 長期自民党政権の元でつくられた事前審査、発言時間を割り振られている委員会制度、アメリカモデルに引きずられた議員立法、政府与党の一体化というウエストミンスターモデルへの幻想。 そういう議論から、むしろ同じ議員内閣制度を採用しているヨーロッパ大陸型モデルを紹介して方向性を示している。

・参議院の政党化による衆院のカーボンコピーと強すぎる権限。 ・一方で、良識の府として、牽制機能を重視する見方。 ・民主党がモデルとしてきた、イギリスのウエストミンスターモデルの行き詰まり。 特に興味深いのは、「会期不継続の原則」である。 この原則の由来は、市民革命以前のヨーロッパで特定の議案を審議する臨時の機関であり、国王から付託された議案を審議し、結論が出れば解散したことにあるという。 すでに諸外国のほとんどがこの制度を廃止しているのに、この国では与野党の駆け引きの材料に使われている。

この国がいまだに諸外国のモデルを消化しきれず、いまだに会期に縛られ、法案はその都度葬られてしまう現状の制度は、いかにも欠陥が多いといわざるを得ない。

この国の国会がいかに世界的に見ても異質なものかよくわかる。 今必要な提言が多く盛り込まれている。