「食の終焉」ポール・ロバーツ著 ダイヤモンド社2012/05/13 09:32

現代社会における食をめぐる様々な問題点を抽出し、その持続性に疑問を投げかける。
読み進むほどに多くの課題が見えてくる。

成長因子テトラサイクリンの発見に始まり穀類を中心とした工業化による肉の大量生産の始まり。その後の大量生産仕様の鶏の開発とサプライチェーンの要求によるオートメーション化と大規模化。
調理時間の短縮化による加工食品の拡大。今やアメリカではサンドイッチが最もよく夕食に登場するという。
食品産業の過当競争による利幅の減少を背景に、量を売ることによる利益の拡大のためのスーパーサイズ化現象。
需要の拡大のため新製品の投入を続ける食品会社、一方で生産者に対し価格交渉力を持つサプライチェーン。
補助金によって余剰生産農産物を低価格で輸出し続ける先進国により、「緑の革命」が頓挫したアフリカ。
鳥インフルエンザの発生拡大の阻止に努力しようとしない中国。
などなど
多種多様な商品を市場の要求に応えて少しでも安く供給されるまで働き続ける巨大な食システムの問題を暴きだす。

中でも、特に最終章の悲観シナリオが恐ろしい。気候変動、地下水の減少、極限までの農地拡大、土壌侵食、小麦さび病や鳥インフルエンザなど様々な要因が重なり同時多発的に発生する食の大惨事。
一方で、日本の合鴨農法やキューバに見られるような循環式生産モデルも取り上げ、楽観シナリオも提示する。

どちらに転ぶかは、我々のこれからの行動に委ねられている。

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