「経済は世界史から学べ!」 茂木誠著 ダイヤモンド社 ― 2014/06/28 21:40
現代に至る世界の経済の仕組みがいかに形作られてきたのか、歴史的に概観した一般向けに書かれた経済の本である。
独特の視点がユニークである。
興味深いところを、いくつか抜粋する。
「国の借金とも言える国債を引き受けたことが、中央銀行設立の動機だった。」
「全米12箇所に置かれた連邦準備銀行の出資者はすべて民間の金融機関である。」
「第一次世界大戦では、欧州各国は軍事費を捻出するため国債を発行した。その多くが、アメリカの証券市場で発行された。当時アメリカは、軍需物資の輸出で潤っていた。一方で、連合国の勝利が揺らぐと、国債が紙くずになるのを恐れて、参戦を決意した。」
「ドイツがユーロ導入に熱心だったのは、マルクを捨てて統一通貨に加われば、マルク高不況にならずに済むから。」
「ポルトガルやオランダが競って日本に来航し、長崎出島にオランダ商館を建設した最大の目的は日本銀を手に入れるためだった。そして、江戸幕府が鎖国に踏み切ったのは銀の流出を恐れたからだ。」
「ドイツ、アメリカ、日本の発展の歴史を見れば、発展途上国が先進工業国に転換する過程において、保護主義の採用が効果的であることが歴史的に証明できる。」
また、経済面からの歴史をたどると、アメリカに翻弄されてきた日本という構図が浮かび上がってくる。
「米韓FTAは、金融危機後の雇用確保のためにアメリカが輸出倍増計画の一環として韓国に締結を迫ったものだ。ISD条項も米韓FTAに含まれている。」
「日本の地方では、商店街の多くがシャッター街となってしまったのは、日米構造協議による大店法の改正がきっかけである。」
「その後の、建築基準法の改正、裁判員制度の導入、労働者派遣法の改正、郵便貯金の改革などは、いずれもアメリカの年次改革要望書の要求の結果である。」
「20年以上続いた構造改革の仕上げが、TPPである。」
「日本の廃藩置県がうまくいったのは、中央政府が藩の借金をすべて肩代わりするとしたから。」
「日本の輸出攻勢を抑えるためなされたプラザ合意の円高誘導後、円高不況となり、内需活性化のための低金利がバブルを誘発。アジア各国にも飛び火し、ドルペッグのアジアNIESが急成長したが、その後の『強いドル』政策によって、アジア通貨危機が引き起こされる。」
「その後、ヘッジファンドの円買いによって、急速に進んだ円高を阻止するため、ド大量に日本政府はアメリカ国債を購入。アメリカ政府は日本に国債を売った金で軍事費を調達。さらに、余剰資金は不動産バブルを引き起こす。これが、サブプライムローンの引き金となった。」
著者があとがきで述べている。
「『消費増税は正しいか誤りか。TPP参加は正しいか誤りか。』経済理論上はどちらも論証可能なのです。…成熟した民主主義国家において、最終的に国の方向性を決めるのは主権者たる国民であり、選挙を通じて国民が選んだ政治家です。愚衆政治に陥らないためには、国民の意識改革が必要です。」
さて、この先の世界経済は、そして日本経済は、どのような物語を描いていくのか。
そのヒントは、本書の中にいくつも散りばめられている。
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