「キラキラネームの大研究」伊東ひとみ著 新潮社 ― 2015/07/04 20:32
自分の子供にアニメやゲームのキャラクターのような名前をつける「キラキラネーム」が、ここのことろよく見られるという。例えば、光宙と書いてピカチュウ、今鹿と書いてナウシカ、心愛と書いてココアといった具合である。
そこで著者は、日本語の由来まで遡り、人名と日本語との深い関わりを分析し、
もともと、日本語に備わっていた柔軟性がその起源ではないかとの考察を開始する。
「はるか昔、古代日本には自前の文字がなかった。そういう構図の中で名前というものを捉え直してみると、要するに名づけは声に出す言葉の響きと漢字という文字がせめぎ合うホットな最前線ということができる。」
「考えてみれば日本語にはこう書かなければならないという厳密な決まりがない。…ことほど左様に日本語とは恐ろしいほどに融通無碍で大胆かつ柔軟な造語能力を有する言語なのだ。」
そして、明治期の戸籍法の制定が実に多様な難読の姓の誕生を生む。この時期に生まれた姓も幾つか紹介されている。例えば「目」「及位」「栗花落」「樹神」「子子子」「十二仏」「十八女」(読みは本書を手にとって欲しい。)といった姓が紹介されている。
この時期のユニークな名前も、リストアップされている。「真善美」「日露英仏」「捨鍋」「毛生」などこれらいずれも女性の名前である。
そして、戦後の当用漢字による漢字制限。著者は、キラキラネームの由来がここにあるという。
この時に採用された簡略化された字体により漢字の本来の意味との断絶がなされ、古来日本人の教養に深く入り込んでいた漢文に触れる機会が減り、カジュアルな漢字とともに団塊ジュニア世代の子供の名づけに外来語を無理やり当てはめたキラキラネームが増え始めたと分析する。
著者の日本語への深い理解が裏打ちされて、日本語の変遷の歴史がよくわかる。キラキラネームをきっかけとして、日本語という言葉を改めて見つめ直すきっかけとなる良書である。
「日本の納税者」三木義一著 岩波新書 ― 2015/07/04 20:41
現代の日本の税制の問題点を指摘し、主権者意識のない日本の納税者に向けて、納税者の権利を取り戻そうと我々に呼びかける本。
税法を専門にしている著者だけあって、普段我々の知らないような税をめぐる問題点がいくつも示される。
例えば、税務調査にあたっての事前通知。ごく最近の改正により一応電話にて通知することになっているが、無予告調査の可能性も残しているという。
また、平成25年の改正まで税務署の更正処分にはその処分理由は示されなかった。一方納得できない納税者が異議申し立てをしようとするとその申立書には理由を書く欄があるという。
さらに注目すべきは、所得税の負担割合である。1億円までは所得に応じて増加していくが、なんと1億円を超えると所得税の負担割合が減少に転じるという。
ここで、ピケティを引き合いに出し、累進課税の導入や、不労所得の税率の低さを指摘する。
また、世界主要各国の納税者権利憲章を紹介し、財務省の抵抗で骨抜きにされてしまった納税者権利憲章の再策定により、納税者意識の高まりを期待する。
最後の著者の言葉が印象に残る。
「日本国憲法の下での私たちの社会の税は、資本主義の欠陥を是正し、民主主義を維持・発展させるための対価でなければならない。」
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