「日本の納税者」三木義一著 岩波新書2015/07/04 20:41

現代の日本の税制の問題点を指摘し、主権者意識のない日本の納税者に向けて、納税者の権利を取り戻そうと我々に呼びかける本。

税法を専門にしている著者だけあって、普段我々の知らないような税をめぐる問題点がいくつも示される。
例えば、税務調査にあたっての事前通知。ごく最近の改正により一応電話にて通知することになっているが、無予告調査の可能性も残しているという。
また、平成25年の改正まで税務署の更正処分にはその処分理由は示されなかった。一方納得できない納税者が異議申し立てをしようとするとその申立書には理由を書く欄があるという。
さらに注目すべきは、所得税の負担割合である。1億円までは所得に応じて増加していくが、なんと1億円を超えると所得税の負担割合が減少に転じるという。
ここで、ピケティを引き合いに出し、累進課税の導入や、不労所得の税率の低さを指摘する。

また、世界主要各国の納税者権利憲章を紹介し、財務省の抵抗で骨抜きにされてしまった納税者権利憲章の再策定により、納税者意識の高まりを期待する。

最後の著者の言葉が印象に残る。
「日本国憲法の下での私たちの社会の税は、資本主義の欠陥を是正し、民主主義を維持・発展させるための対価でなければならない。」

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