「世界経済史概観」アンガス・マディソン著 岩波書店2015/08/30 09:21

大作である。
その副題にあるとおり、古今東西の世界を扱っていて、それぞれの地域の人口や所得などの経済統計が掲載され、その資料の豊富さと、各地域の分析に圧倒される。
本書に掲載されている統計表を見るだけでも感心する。

特に、注目したいのは、日本についての記述と将来の予測である。
各地域の歴史についても詳細によく把握していることがよくわかるが、日本についても同様に、独自の視点でよく分析している。
たとえば、信長、秀吉、家康についての記述。当時の日本から産出されていた銀と中国の絹製品、東南アジアの香辛料を使った三角貿易の分析。唯一の西欧との窓口であったオランダからの知識の流入が明治維新に与えた影響。戦後の驚異的な経済発展の分析。
などなど
また、1930年代の日本の植民地の経済成長の分析も興味深い。
日本の植民地時代、満州、朝鮮、台湾の経済はいずれも4%前後と当時の他の地域に比べてかなり高い伸びを示していたという。

もう一つ注目したのが、最終章の2030年の世界経済予測である。
ここでも、世界各地の人口予測と経済成長予測の詳細な統計資料が掲載されている。
興味深いのが、世界における地域別GDPの割合で、アジアの上昇予測(2003年の40.5から2030年の53.3)と西ヨーロッパの低下(2003年の19.2から2030年の13.0)の対比が目を引く。
なお、2003年から2030年の一人当たりGDPの伸びでは、中国(4.5)、インド(4.5)、ロシア(3.5)が高く、日本は最も低い伸び(1.3)となっている。
もう一つの意欲的な分析が、世界エネルギーの需要予測である。
ここではあくまで予測にすぎないため、抑制的な記述となっているが、IPCCの問題提起を踏まえ、これから世界エネルギーの80%を消費すると予測される中国、インド、ロシアがIEA(国際エネルギー機関)において対処すべきとしている。

本書は、対象とする期間においても、地域においても壮大なスケールで世界を概観できる著作である。

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