「明治の技術官僚」柏原宏紀著 中公新書2018/07/04 11:11

本書は、幕末にイギリスへ密航して、帰国後に明治期において活躍した五人の長州藩士の物語である。その名は、伊藤博文、井上馨、井上勝、遠藤謹助、山尾庸三である。

本書を通じて、明治期日本が多くの試行錯誤を経て形作られていくさまが丁寧に描かれている。 また、この五人がいくつもの偶然の結果、明治日本の中枢で活躍したこともよくわかる。

すなわち新政府において、英語ができ海外の事情に詳しい彼らは貴重な存在だった。開港場長崎の統治を任された井上馨、開港場神戸を任された伊藤博文、兵庫運上所を任された遠藤謹助である。その後、五人いずれも民部大蔵省に奉職することとなる。

その後の廃藩置県、予算精度の導入、士族に対する秩禄処分など井上馨は政策課題を次々と対応していく。

また遠藤謹助は技術官僚として造幣政策の展開に関わり、山尾庸三は工部省を作り、井上勝は特に鉄道建設に力を発揮する。この時代は、予算の制約もあり、この際井上勝の要望を伊藤博文が政治的決断をしたくだりなどは、長州五傑の仲とでもいうべきであろう。

さらに、大久保利通暗殺後の政治体制で重要な役割を担ったのが伊藤博文と井上馨であった。その背景にあったのが豊富な洋行経験である。

・そして、伊藤博文の憲法調査に基づく明治憲法体制に結びついていく。 ・近代国家形成にあたって、彼らの果たした役割は大きかったことは特筆に値する。それは、若き日の彼らのイギリス留学と幕末という時代を長州藩においてイギリスや幕府との交渉にあたった経験が生きていると感じる。 彼らの歩みを追体験することによって、今の日本をより深く理解することができる。

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