「若年者就業の経済学」太田聡一著 日本経済新聞出版社2011/02/05 21:50

ここのところ、新卒者の就職難が報道される機会が目立っている。 若者を中心とした非正規雇用問題も相変わらず改善のめどは立っていない。

これら、日本の雇用をめぐる激震への処方箋について書かれた書物は数多いが、その背景となるデータとなるといささか心もとない。

本書は、それら議論の背景となる統計データから、ひとつひとつ詳細な分析を試みたものである。

通説通りの裏付けとなるようなデータから、意外な面を示すデータまで幅広い。 たとえば、「若年層の雇用は、景気の変動を受けやすい。」というのが、半ば通説のようになっているが、実態は若年層よりも中高年層のほうが景気の変動を受けている。もちろん、新卒一括採用というシステムは維持され、将来の業績予想が企業の採用行動に影響を与えるという分析もなされてはいるが。

現状と課題を読み解くにはよくできている。 ただ、最終章で若干触れらてはいるものの、これら課題への対策や処方箋まで踏み込んで議論を展開していただければ、さらに深いものとなったのではないか。

「日米同盟vs.中国・北朝鮮」アーミテージ、ナイ、春原剛 文春新書2011/02/05 22:05

アメリカの親日家と呼ばれる、アーミテージ氏、ナイ氏と日経新聞から米戦略国際問題研究所の研究員に転身した春原氏の鼎談である。 やはり日本の内側からの議論に比べると、より視野が広く、将来起こり得る可能性についても、多角的に見通している。

外交当事者たちであったからこそ言える、多くの言葉が詰まっている。 例えば、中国が普天間移設問題などをみて日米同盟の質を試しているとの言。こういう中国に対しては、日米でパラオなどで合同上陸作戦を展開してはどうかと提言している。 また、意外なのはオバマ大統領は、ビジネスライクであるというアーミテージの発言である。 さらに、小沢氏に関しては、明らかに反米であるとみなしている。

各国の情勢分析も、新たな視点が多く考えさせられた。 日本ではあまり報道されていないが、2010年5月に日中外相会談で岡田氏が核保有国の中で核兵器の数を増やしているのは中国だけだと明言している点は知らなかった。 また、中国大使に丹羽氏を起用したのは、中国に対しては経済問題だけに関心があるとのメッセージであるとする。 中国の将来については、断定的なことは述べられていないが、仮に経済成長が減速したとき、一党独裁体制は終焉し、エネルギー資源、水資源、高齢化など様々な問題が噴出すると予測している。 一方、ロシアに関しては、資源頼みの国で、政治は腐敗し国民の健康状態もひどく、BRICsの中に入れるのはふさわしくないとしているのもユニークだし、朝鮮半島情勢については、仮に北が崩壊し統一朝鮮が出現した場合、南北朝鮮の陸軍兵力と鉱物資源、ハイテク技術が組み合わさり、双方が抱える反日の機運をみれば、日米関係を強固にしておくほかはないとしている。

アメリカから見た日本、そしてアジアの姿がよくとらえられている。 戦後50年の日米関係の重さが感じられる。 そして、今までと同様これからの日米同盟の重要性は、その質を変えながらも、重要なことには変わりはないと感じた。