「瞬間説得」ケヴィン・ダットン著 NHK出版2011/07/24 22:28

心理学的に見られる人間の行動を逆手にとって、豊富な事例を挙げながら、「その気にさせてしまう」手法を学ぶ本。

本書に紹介される事例は、小話のようにおもしろくて上質の話題が豊富にある。
たとえば、
チャーチルが晩餐会で銀の塩入れを盗もうとした人を発見した後の行動。
暴力を振るわれることの多い職業安定所の職員で、一度も振るわれたことのない人物の秘訣。
同じワインを、高級ワインとテーブルワインのボトルに入れて、ソムリエに試飲させてもらったときの感想。
きりのよい値段と端数のついた値段のついた商品の売れ行きの違い。 ホテルのタオルの再利用のためのメッセージの違いで変化する人間の行動。
サクラがいるだけで、本来の色とは違う色を答えてしまう実験。
苦痛のある状況に慣れてしまうと、その場からは逃げなくなってしまう実験。
支持政党が違うだけで、矛盾が見えなくなってしまう現象。
禁煙のロンドンの地下鉄で、タバコに火をつけた人を見つけたときにそれをやめさせた男の行動。
ギャンブル投資に成功するのは脳の感情領域に異常を持つ人たち。
電気ショックよりも報酬の方が人の行動に効果があるという実験。
泥棒に入られた時に即座に対応して、泥棒の住所を聞き出して犯人逮捕まで結び付けた人物。
などなど、数え上げたらきりがない。

行動経済学にも通じるところがあり、いかに人間が合理的でない存在なのか、簡単にだまされてしまうのかがよくわかる。
 改めて、人間を合理的存在と考えた旧来の経済学が、現実世界を説明できないのかもよくわかった。

そしてもう一つ。
「人間には、成長思考と固定思考がある。
肯定的に考える訓練をするだけで、不安は取り除かれ、成長思考に転ずることができる。」