「共通番号」森信茂樹+小林洋子著 日本経済新聞出版社2011/10/27 21:43

6月30日に政府が決定した「社会保障・税番号大綱」と諸外国の共通番号制度の解説書である。
正式名称は、「マイナンバー」、住民票コードをベースに2014年6月に番号が交付され、2015年1月1日から運用が始まる。
この番号と番号に関わる個人情報を確認するために、専用のウェブサイト「マイ・ポータル」が設けられ、番号制度に対応したICカードが交付される。
というように、私自身の勉強不足かもしれないが、すでに具体的なスケジュールが決められているということに、本書を読んで少なからず驚いた。

もちろん、日本の国民に根強い「プライバシー」の問題については、事前策・監視・事後策の三段階で第三者機関も設立するなどきめ細かな対策が図られている。

そして、なぜ今共通番号なのかという疑問にも、丁寧に解説がしてある。
すなわち、民主党政権になり、相対的に高所得者に有利な所得控除から税額控除に切り替えることで格差拡大を食い止めることや、消費税の逆進性緩和のための「給付付き税額控除」の導入を前提としているということである。定額給付金の支給対象や子供手当の支給対象での所得制限の撤廃は、十分に把握できていない現状が確かにある。

もう一つ付け加えれば、出産や引越などで必要になるさまざまな手続き書類の簡素化である。住民票等の添付書類がいらなくなるというメリットがある。

諸外国の制度についても詳しい。古くから導入され、国民の信頼が厚くその民間利用にもほとんど制限のないスウェーデンから、プライバシーへの配慮からようやく納税者番号として2009年に導入されたドイツまで、実にさまざまな形態を紹介している。

以上を踏まえて、著者は負担と給付のために、そして効率化のために国民目線でもぜひ必要な制度だとしている。

これだけ重要な制度なのに、なぜか国民レベルでの関心が非常に薄いことに驚きを覚える。
ぜひ、導入を前に多くの人たちに読んでもらいたい本である。