「植物はすごい」田中修著 中公新書 ― 2012/09/18 05:09
植物の特性を、その生き残り戦略から取り上げたユニークな本。簡潔で、とても平易な文章も好感が持てる。
新書ながらその内容は、幅広く、新たな知識を教えてくれる。
・抗酸化物質であるビタミンCは、植物が強すぎる太陽光のエネルギーによって発生する活性酸素を除去するためにつくられた仕組みである。
・酸っぱさや苦み、辛さを持った植物、オクラやレンコン、モロヘイヤなどのぬめり、タンポポやゴムの木の切り口から出てくる白い液体などはいずれも、植物が昆虫からの食害から実を守るために作られた仕組みである。
・森に漂うフィトンチッドの香りも同様に樹木が最近などから身を守るために出している。
・冬越しするタンポポの葉のロゼットは動物の食害を防ぐために地面と同じ高さで芽をつけたものであり、同時に場所取りの役目も果たしている。
・ブルーベリーなどに含まれるアントシア二ン(赤や青)と人参などに含まれるカロテン(黄色)は花の色素で、高山に行くほど花の色が鮮やかになる。その理由は、紫外線が強くなるために活性酸素の害から身を守るためである。
・大根やほうれん草を寒さにさらすほど、甘みが強くなる理由は、糖分を増やすことで凍りにくくするためである。
・ヒガンバナの球根は、リコリンという有毒物質を含んでいるため、墓地や畦に植えてネズミやモグラの害から守った。
などなど
このほか、植物が成長するために必要な物質ジベレリンは日本人が発見した。
とか、温州ミカンは日本でつくられたミカンである。
など日本に関する話も登場する。
また、サボテンやアロエなどのCAM植物は、ほかの植物と違って昼間の水の蒸発をほとんど行わないが、この体温が上昇しない仕組みはわかっていないという。
このほか本書には登場しないが、花が咲く仕組みや光合成の仕組みなど解明されていないことも数多い。
われわれが普通に食べている様々な野菜や果物も、実は植物たちが身を守り、子孫を残すために工夫して身に付けたものを活用させて、それを頂いているに過ぎないことを感じた。
やっぱり「植物はすごい」。
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