「格差と民主主義」ロバート・ライシュ著 東洋経済新報社2015/01/25 20:23

格差が拡大し、富裕層に有利な社会になりつつあると懸念する著者のアメリカ国民に向けた提言である。
しかし、そこに示される問題提起は日本にも十分通用する。

たとえば 「政府予算が削減され、、小さくなっていくパイの分け前を求めて平均的アメリカ人が互いに競争している。」
「プライベートエクイティのマネージャーたちはリスクをとるどころか事実上政府に肩代わりさせている。」
「私たちは、過去の大きな経済危機から極めて重要な教訓を得ていない。企業所有者や企業幹部が平均的労働者に比べて過度に大きな利益を得るという極端な不均衡に陥ると経済はひっくり返るというきょうくんだ。」
「経済は誰のためにあるのかという根源的な問題が浮かび上がる。・・・フルタイムの仕事を望んでいるのにパートタイムで働いている人々、請負労働者や派遣労働者など雇用の安全性がまるで確保されずに毎月の給与を使い切るような生活をしている人々のことも考慮に入れていない。」
「現代の共和党右派は、一世紀以上前に支配していた思想〜社会ダーウィン主義をそのまま流用して適者生存を説く。」
などなど

また、よく聞く議論への反論もなかなか鋭い。
嘘その1 「富裕層に対して減税すれば、皆に良い効果を波及させるトリクルダウンが発生する。」
嘘その2 「法人税を下げれば、企業は雇用を創出し景気も活性化する。」
嘘その3 「政府の規模を小さくすれば、雇用が拡大し景気も好転する。」
嘘その4 「規制が少ないほど経済は強くなる。」
嘘その5 「財政赤字を削減すれば景気は回復する。」
以上の議論は、そのまま日本にも当てはまる。

そして、今こそ民主主義が必要とされているとする著者の主張。
「ただプラカードを掲げるのではなく、自分と意見が異なる人々を議論に巻き込んで欲しい。ただし、議論だけでは十分でない。反対の立場の人々にも理解してもらえるように持論を表現することが重要だ。互いに共有できる道徳観念に訴えかけよう。」

行動するのはあなた自身だと呼びかける著者の声が、重い。

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