「無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論」海老原嗣生著 プレジデント社 ― 2015/06/27 20:52
いわゆる中間管理職向けに書かれたマネジメント論。とはいえ、この手の著作にしては珍しく、具体例と理論が見事に噛み合って非常にわかりやすく、実践的な著作に仕上がっている。
例えば、
「仕事は楽しい、という状態をつくる。つまり、社員の内発的動機を高めると社員は自ら頑張るようになる。」
「与えた目標が簡単すぎたり、難しすぎた場合には、次の目標を再設定する。マネジメントの本質は、目標を随時変更して、ギリギリの線を保つ。」
「上司は部下にぴったりな目標を与え、逃げ場をなくし、どうやったらいいかを示していくのが仕事。」
「思う存分やれなどという言葉は、従来からそういう風土のある中で発せられなければ意味がない。上司は言葉を発する前にその下地である風土を整えなければならない。」
「組織のフラット化によって今の役職者は昔よりも仕事量が増えている。骨太で、誤解なく相手に伝わる方針と、それを受け取る人が自分の裁量の範囲で、指示をより詳細設計していく分業体制が必要になった。そのためには、部下が物怖じせず、ものが言える上司であることが必要。」
「合理的条件や外部誘因などでいくら生産活動をコントロールしようとしても、インフォーマルグループの作る空気には勝てない。インフォーマルグループを味方につけ、部下の本音を吸収し、こちらの指令の緩衝材になってもらうそういう配慮が必要。」
そして、「指示や判断の根源がコアコンピタンス」の章では、コアコンピタンスの5条件を提示しつつ、JINSの再生を例に挙げ、選択と集中ではコアコンピタンスの先細りを生むとしつつ、会社が永続的発展を続けるためにはコアコンピタンスが生かせる新たな領域を見つけるために多事業に分散投資をしていくことも重要と説く。
さらに、日本型経営の特徴として、ギリギリの線を与え続けることと、将来の見通しがクリアというモチベーションサイクルがそのままキャリアパスの下敷きとなって、日本企業の強みとなっていると分析している。
各章の最後にその理論を研究した人物とその内容が紹介されているのも学習の補助となる。
中間管理職だけではなく、組織論を学ぼうとする人たち全般にもお勧めしたい本である。
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