「佐治敬三と開高健 最強のふたり」北康利著2015/10/31 21:21

サントリーの二代目社長佐治敬三と芥川賞作家であり名コピーライターでもあった開高健の伝記。事実は小説よりも奇なりというが、特に開高健の生きざまが壮絶で印象に残る。

また、赤玉ポートワインに始まりあの竹鶴を入社させてウイスキー醸造を開始し、何度もビールにチャレンジし続け、画期的な広告で知られるサントリーの歩みがよく分かる。

それにしても、「やってみなはれ」に象徴されるサントリーの新規事業への挑戦の歴史は、チャレンジ精神に満ち溢れている。
神谷酒造というワインの先発メーカーがあったにもかかわらず広告戦略を活用してシェアを伸ばしていった赤玉ポートワイン。
ウイスキー醸造に乗り出すため、のちのニッカ創業者竹鶴を採用し山崎へ工場の建設。
戦後間もない時期の廃糖蜜を使用した醸造用アルコールで作ったGHQ向けのウイスキー。ほぼ同様の原料で作った第二ブランドのトリスウイスキー。
ビール事業におけるミクロフィルターの採用による生ビール。

もう一つ、開高健の物語が非常に興味深い。妻を悪妻として描く一方、彼女が佐治敬三との出会いのきっかけにもなっている。その後の宣伝部における活躍。そして芥川賞の受賞、晩年の南米やモンゴルでの豪快な釣り師。そして、突然の死。さらに、娘の自殺と妻の孤独な死。彼の影響力の大きさもいくつものエピソードで紹介される。

詳細な取材と著者の文章力もあいまって、戦後の高度成長期を駆け抜けた二人が輝いて見えた。
ウイスキーが再び注目されている今、その歴史が生き生きと描かれて、素晴らしい本に仕上がっている。

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