「市場は物理法則で動く」マーク・ブキャナン著 白揚社2015/10/31 21:26

経済学の考え方の根幹に位置する「均衡」という考え方に、最新の科学的成果や、現実の市場の動きなどの実証的資料を積み上げながら真っ向から反論する著作。

リーマンショック後に、類似の主張をする本はあったが、本書は物理学者の立場から述べられた本で、非常に興味深い議論になっている。

その根幹をなすのは、「正のフィードバック」という考え方である。これは自然現象にもよく見られるもので、例えば気象のパターンで新たな大気の撹乱や嵐といったパターンがひとたび発生すると、それがさらに激しくなってしまうことに例えられる。

すなわち、地震の発生パターンに見られるように、金融市場の変動のパターンも、べき乗則に従っているというものである。米粒の山に一つずつ米粒を落としていく実験の結果が紹介されているが、この結果も興味深いことに山が崩れるパターンも、同様の結果を示している。
そしてもう一つ、イギリスの水文学者ハーストがナイル川の洪水記録の解析結果から示されたRS分析法(一定の時間Tの平方根に比例してR変動が増加する)が、短期的な株価変動のパターンにも応用できるという。

いずれにせよ本書で示される結論は、市場の動向は自然現象と同様に均衡には向かわず、予測はできないというものである。

著者は経済学者たちに対して言う。
「大事なのはモデルか、それとも現実か」

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