「世界を破綻させた経済学者たち」ジェフ・マドリック著 早川書房2015/10/31 21:46

本書は、経済学批判というよりフリードマンに代表される新古典派経済学への批判といった色彩が強い。 2009年の金融危機以来数多くの経済学批判がなされてきた。本書はそれら著作の集大成ともいえる。

以下著者の主張を抜粋する。
「この30年あまり正統派の経済学の核をなしてきた理論は大きな害をもたらし、2008年の金融危機とその後の大不況が発生する環境を作り出した。」
「スミスの経済理論は産業革命を事前に予測したわけでも今日の豊かな国々の繁栄を言い当てたわけでもなかった。」
「一言で言えば、自由な市場では商品や労働力や貯蓄などのだぶつきが恒久的に続くことはないと考えられてきた。これはいわゆる新古典派経済学の核をなす理論であり今日の世界各国の経済政策特に緊縮財政を突き動かしている中心的な考え方でもある。」
「合理的期待形成学派の理論は、人々の判断を誤らせて有害な行動をとらせるのは政府による予想外の干渉だと主張した。」
「信頼性の高い研究によれば(フリードマンの主張に反して)最低賃金の引き上げによる雇用の喪失は、まったくあるいはほとんど起きていない。」
「サッチャーとレーガンが主導し多くの有力経済学者が支持して進められた改革は失敗だった。高い失業率と歯どめなき資産投機を生んだ最大の要因はインフレ率を極めて低い水準に抑え込むことに血道をあげた政府の政策だった。」
そして
「あらゆる状況に一つの正解を当てはめるような政策は好ましい結果を生まない。ケースバイケースの経済学、シンプルで美しい理論の対極にある汚い経済学こそが良い経済学なのだ。」

すでにフリードマンの経済学は破綻しているが、本書はそこにさらにとどめを刺した。

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