「カラヴァッジョの秘密」コスタンティーノ・ドラッツィオ著 河出書房新社2018/03/02 12:41


1年ほど前ローマのボルゲーゼ美術館ではじめてカラヴァッジョの作品に出会った。静物画の展覧会で、その写術感と透明感のある画風に引き入れられた。

本書は、このカラバッジョの生涯とその主要な作品をたどるものである。実に波乱万丈の生涯を送ったことに驚かされる。

その主要な作品の描かれた背景と作品に登場する人物のモデルまでも詳細に解説されており、彼の卓越した技法とそこに描く深遠なテーマがあることに、改めて彼が天才であったと思う。

なかでもコンタレッリ礼拝堂の室内の自然光までも考えて描かれた三部作。そして最期の聖マタイと天使の官能的な最初の作品を突き返されてから直ちに書き直した見事な作品に関する話には興味が惹かれる。

圧巻は、ローマの娼婦たちが多く礼拝に訪れていたサンタゴスティーノ聖堂に飾られた「ロレートの聖母」である。
ここに描かれた聖母マリアのモデルは、ローマでよく知られた高級娼婦の1人レーナであったという話であり、これを見た人々にもすぐにそれとわかったというが、教会はこの絵を撤去しなかったというから素晴らしい。

多くのタブーに挑戦しながら傑作を残したカラバッジョ。
その一方で、多くの犯罪や傷害事件に関わってもいる。
また、有名になるに従って多額の報酬を受け取っているが、彼はいつも質素な生活を過ごしその財産を示すものは何も残っていない。
そして悲劇的な最期を迎える…。

まるで上質な物語を読んだかのような読後感を与えてくれる。

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