「世界を変えた6つの気晴らしの物語」スティーブン・ジョンソン著 朝日新聞出版2018/03/01 08:48


本書は、人間の持つ性質である「気晴らし」について、ファッションとショッピング、音楽、味、イリュージョン、ゲーム、パブリックスペースについて、それぞれの起源と歴史を述べたものである。

通常の人類史とは異なった観点から書かれた書物であるが、非常にユニークで面白い。人類の発展とは、このような遊びや驚きからの要素が大きいものと改めて感じる。

まずは、ショッピング。
17世紀のロンドンに出現したショッピングストリートは、店舗デザインが始めてマーケティングツールとして使われた事例として紹介されている。
それとともに興味深いのが、産業革命につながる起源こそ木綿に対する強い欲求でありそれはサラサの大流行に見られる女性のファッションに対する強い欲求である。すでに18世紀後半にはファッション雑誌や流行のサイクルが始まっていたという。
そしてこれにより当時の社会的地位が次第に曖昧になり、19世紀から20世紀にかけての平等社会の実現につながったという。

次に、音楽である。
なんと旧石器時代の遺跡からも骨を加工した笛が発見されていて完全四度と五度を出すようになっていたという。人類にはもともと音楽への欲求が備わっていたといえる。
また、ヴォーカンソンによる自動楽器の考えがジャカールの自動織機につながりそしてこれがコンピュータにつながっているという話もとても興味深い。
同様にピアノの鍵盤がタイプライターの開発につながった話や、自動演奏ピアノの同期の技術から周波数ホッピング(スペクトラム拡散技術〜携帯電話やWi-Fiの通信)につながっているというから音楽が現代社会に深く音楽が関わっていることがよくわかる。

そしてゲームである。本書によればゴムボールの起源はカリブ海や中南米であり、マヤの競技場跡が紹介されている。サッカーが強いのもこういう歴史があったことと関係があるのかもしれないとも思える話である。

本書を通じて、人間に備わった目新しさを求める衝動がイノベーションにつながったという著者の考察は大いに参考になる。

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