「ディープ・シンキング」ガルリ・カスパロフ著 日経BP社2018/03/06 08:20


あのチェスの世界王者だった著者がIBMのコンピュータであるディープブルーに負けたというのは、有名な話である。
本書は、その著者による当時の対戦に至る過程と、AIに関する著者の考えがよくわかる。

コンピュータによるチェスのプログラムの原理は、ドイツの暗号解読とチューリングテストで知られるアラン・チューリングとベル研究所のクロード・シャノンによって提唱された。特にシャノンによるタイプA〜網羅的な探索手法、タイプB〜全ての手をチェックするのではなく限られた好手のみに注目する手法の分類法がもととなり、当初はタイプBをベースに開発が続けられてきた。
しかし、結局はうまくいかず、機械の高性能化に伴って、あのディープブルーでは、力ずくの高速探索すなわちタイプAが主導権を握ることになる。
すなわち大量のデータからルールを作り上げているだけなのである。
つまり結局は、機械では戦略的思考はできないということである。

ここで本書で紹介されているピカソの逸話が面白い。
「コンピュータなんて役に立たない。答えを出すしか能がないんだから。」

そして今主流になりつつあるのが「勝てないなら一緒にやろう」という考え方である。
著者はこう述べている。
「肉体労働を引き受けてくれる機械のおかげで私たちは人間の人間たる所以つまり精神活動にもっと集中できるようになった。知能機械がその傾向をさらに推し進めるはずだ。人間は認知機能の単純な部分を機械に任せることで精神活動を創造や好奇心、美や喜びへと高めていける。」

AIが再び脚光を浴びている今、改めてこのような考え方が出ていることに、一種の安心感を覚える。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://takokakuta.asablo.jp/blog/2018/03/06/8798501/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。