「戦国時代と大航海時代」平川新著 中公新書 ― 2018/06/11 11:14
中世における世界進出を進めるスペインとポルトガル。この時代はインドや東南アジアの国々が植民地化されている。多くの住民も虐殺されている。ところが、日本は全くそういうことはなかった。
また、豊臣秀吉の朝鮮出兵についてはその理由が諸説あり定まっていない。
これらの疑問に、明確に答えたのが本書である。また、この時代の世界との交流が、次々と明らかにされ、我々が思っていた以上に世界とのつながりがあったことに新鮮な驚きを覚える。
まず、秀吉の朝鮮出兵。本書によれば、秀吉はポルトガルとスペインによる世界征服への動きへの対応の表れだったという。その理由として、フィリピン総督やポルトガル国王に対し明国征服の野望を強い口調で知らせているのである。そしてこの朝鮮出兵という巨大な軍事行動がスペイン勢力に恐怖心を与え、アジアの軍事大国としてヨーロッパでも知名度を上げることになり、これが日本が植民地化されなかった理由の一つである。
さらに、本書では伊達政宗に注目する。伊達政宗は、家康の時代、慶長遣欧使節として支倉常長をスペイン国王とローマ教皇のもとへ派遣する。この時代家康はキリスト教禁止令を発令していた。にもかかわらず政宗は伊達領でのキリスト教布教を認め、宣教師の派遣を要請していたのである。ただ、スペインは貿易に応じるよう条件として日本全国での布教の保証を譲らず交渉がうまくいかなかったため、支倉の報告を受けて、間を置かずに伊達は領内に禁教令を布いたのである。
また、イエズス会宣教師がこの時代奴隷貿易に関与していた、宣教師たちは軍事力を持ち日本征服を考えていた、当時の将軍は海外からは皇帝とみられていた、など興味深い話がいくつも出てくる。
本書を読んで、パズルのピースがぴったり当てはまったような心地よさを感じる。
加えて、世界史と日本史との関連性も理解しやすく、トリデシャリス条約と日本の関係やカトリックとプロテスタントの関連と日本への布教活動の動き、そしてなんといってもこの時代の日本がいかにうまく世界と渡り合っていたのかまでつかむことができ、爽快感さえ覚える本となっている。
中世の歴史がますます面白くなる一冊である。
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