「シェア」レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース NHK出版2011/03/05 22:00

シェアというテーマであるが、現代は人類の歴史の中でも産業革命に匹敵する大きな変革期にあるという位置づけでとらえている。 太平洋のど真ん中に広がる太平洋ゴミベルトを紹介し、倉庫業の隆盛と頻繁なモデルチェンジを繰り返し、ものに所有されている現代社会を憂い、大量生産大量消費の限界に来ているとし、新たな動きとしてのシェアをテーマとした本である。

多くの事例が紹介される。 ロンドンのリフトシェアドットコムの自家用車に同じ通勤経路の人を乗せるライドシェア。 子供の年齢や学習程度に応じたおもちゃのレンタルを行っているPSS。 たまにしか使わない道具を他人に貸し出すP2Pサービス。 デザイナーバッグなどのぜいたく品のレンタルサービス。 中古品の交換サイト。 P2Pで自家用車を貸し出すサービス。 泊まる場所が必要な旅行者に余った部屋を貸し出したいエアビーアンドビー などなど、様々なサービスがごく最近生まれて成長している。

また、快適にシェアするためには、記名性のあるフェイスブックやツイッターなどのオンラインネットワークが前提になるというところが興味深い。いまだに匿名性を主流としている日本はまだまだ世界の潮流からは遅れているということになるのだろうか。

さらに、シェアというとすぐに、共有地の悲劇という命題を思い起こしたが、しっかり本書では押さえられていて、ウィキペディアに代表されるようなサービスでコミュニティのために役立つことをすれば自分の社会的な価値が高まるという現象がインターネットにはすでに現れているとする。

最終章で著者は言う。 いまここにある変革はあの産業革命にも匹敵するものである。 そして、GDPという物差しで一国の豊かさを測ることには問題が多いとし、スティグリッツの幸福を測る指標の提言を紹介している。 いまだにこの国では、成長戦略と称して、経済成長の幻想から脱しきれていない。 そろそろ経済の規模ばかりをいう時代は終わりにしよう。 本書には、持続可能な社会を作るためのヒントがたくさん詰め込まれている。

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