「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」ウンベルト・エーコ、ジャン・クロード・カリエール 阪急コミュニケーションズ2011/02/27 20:58

ユニークな表題で、本好きの読者にとっては興味がそそられる。 ひもといてみると、古今東西の作家や書物、歴史や文化論に至るまで多岐にわたり、知的な刺激が心地よい。

一方で、進む科学技術に対してはなかなか手厳しい。 最近の新しい記録媒体は、次から次へと変化し古いものの再生装置は失われてゆく。CD-ROMの時代は終わり、DVDの時代もそれほど長くは続かない。まして、電気がなければ見ることもできない。コンピュータは2年に1回は新しいものを買い替えなければいけない。 しかし本であれば読むことができる。

さらに、現代はインターネットでフィルタリングなしでありとあらゆる情報が手に入る。したがって、真偽を確かめられない情報をチェックすることと、記憶する技術よりも考えをまとめて結論を導く技術がより重要になるというのは共感できる。

また、グローバリゼーションの社会ではわれわれはすべてを知ることができる。インターネットが存在していたらホロコーストは起こりえなかった。中国に関してもいくらフィルターをかけても結局は情報は行き来する状況は同じ。というくだりなどは、まるで現在起こりつつある中東の民主化運動のうねりと重なり合って興味深い。

書物をこよなく愛する二人の、しゃれた対談集に仕上がっている。 なにより、装丁が素敵である。

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