「大発見の思考法」山中伸弥、益川敏英 文春新書2011/03/06 22:09

言わずと知れたips細胞の生みの親山中教授とノーベル物理学賞を受けた益川教授との対談集。 二人とも超一流の研究者だけあって、多くの貴重な発言がたくさん詰め込まれている。

二人とも同じようなひらめきが、それぞれ大きな研究成果を出すきっかけとなった。 はたから見れば、遠回りで非効率で無駄なことばかりやっているように見えることがあるが、一見無駄なことが大事である。 現代は効率ばかり求められるが、無駄なことの中に実は豊かなものや未知なるものが隠れている。 一人では行き詰まってしまうことがよくある。人と人とのディスカッションが閉じた思考回路を外に連れ出して行ってくれる。 最近は、知的財産が非常に重要視されているが、むしろ研究者の原動力は真理を知りたいという好奇心である。 どんなに世の中が便利になってもフェイストゥフェイスの人間関係と情報発信力が大事である。

なお、山中教授はここに至るまで必ずしも順風満帆だったわけではなく、整形外科医になりたての頃「邪魔中」とよばれていたり、アメリカに渡るための試験を受けるときに自分を売り込むためあれもできますこれもできますとできないことまで書いたり、アメリカから家族を追って帰国した当初一人だけでの研究にうつ状態になってしまったり、いやおうなく病院勤めに戻るために住宅を買おうとしたり、日本の奈良先端科学技術大学院大学に主任研究者で応募するときに一人ですぐにできるとは思えないノックアウトマウスを作れると言って受験したりなど、相当の苦労を経てきたという意外な面に、親しみとともに、われわれにも道は開けるかもしれないと安心感を与えてくれる。

特に山中教授のips細胞研究を通じて人命を助けたいという志の高さに、心を打たれた。

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