「国家は破綻する」カーメン・M・ラインハート、ケネス・S・ロゴフ著 日経BP社2011/05/28 17:01

大作である。
その扱っている期間も、調査対象国も幅広くまた詳細に分析されており実に説得力がある。

本書の要点は、 歴史的に見れば国家の破綻はよくあることであり、「今回は違う」ということはあり得ないという事実である。
確かに、本書をひもとくと実に多くの国が普通にデフォルトしているということがわかる。

そして、GDP比で100%を超える多額の負債を抱えた国で、経済成長で借金を返した国はただ一つしかないという事実。
どこかの国で、成長戦略で債務償還は可能などという掛け声がむなしく聞こえる。

本書のように公平に多くの国を扱っている中でも、バブル崩壊後今も低迷を続ける日本は異常であり、その抱える負債も異様であるとの指摘は重い。

冷静にかつ客観的に見つめても、本書から導き出される日本の方向性は、もはや明白である。

そして、さらに恐ろしいことに、今回の金融危機後にアメリカがとった政策は日本とほぼ同じであるという点である。

興味深い分析もいろいろある。
「国がデフォルトを起こす主な原因は返済能力ではなく返済の意思である。」
「経済成長によって債務比率圧縮に成功したのは1985年のスワジランドただ1国である。」
「20世紀にデフォルトを起こしたのはヨーロッパの低所得国と中南米だけだという通説は事実からかけ離れている。」
「国にとっては、公的債務危機から脱するより金融危機をまぬかれる方が難しい。」
「金融危機後3年間で公的債務の実質残高は平均しておよそ2倍になる。」

そして最後の締めくくり。
「政府も投資家も自らをだまし、幸福感に酔いしれている国は、悲惨な結末を迎える。」

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