「幻滅」ロナルド・ドーア著 藤原書店2015/02/01 20:47

知日家で知られる著者の最新作。著者はすでに90歳だが、その筆致は衰えを感じさせないどころか、戦後の日本を良く知る著者だからこそ言える現代の日本への憂慮を述べている。

以下、本書から抜粋する。
「今でも、大変親しい日本人の友人がかなりいる。その友人たちとの再会だけでなく毎日の生活で・・・日本は依然として住み心地がいい国である。しかし、私の対日観を変えたのは、その後の憂うべき右傾化である。」
池田信夫の「論壇の勝者だった丸山は政治においては敗者であり高度成長期には反時代的だった福田(恆存)が今となっては勝者である。・・かつて丸山と福田が論じたような深さにおいて現在の日本の行き詰まりを問う論客も無くなった今、我々にできるのは彼らを読み直すことぐらいだろう。」というコメントに対して「全く同感。」
「先進国といっても、・・・農村における日本社会のルーツをかなり意識していた社会で、平等主義的社会連帯意識がまだ強い国だった。」
「イギリスでサッチャー、米国でレーガンが新自由主義革命を始めて、通産省や大蔵省に米国でビジネススクールや大学院でMBAを取ってきた新古典派経済学に洗脳された世代の役人が課長・局長に昇進する時期から日本は変わり始めた。」
「1980年代になると、能、浮世絵、建築、茶道などの工芸美術を誇る日本でなく、また、かなり平等的な、社会連帯意識の高いことを誇る日本でもなく、ただ、富と権力の日本を誇りにする傾向が見えてきた。」
「90年代の中頃、新自由主義の本質は、日本の伝統的な和の精神と正反対に、国民全体の福祉の最大化は、個人の利益追求を競争市場でぶっつけ合わせて、争い合わせて初めて得られるという信念だといえよう。」

戦後70年という節目の今、日本を良く知る外国人が本書のような憂慮(というより表題の通り幻滅)を表明していることに注目せざるを得ない。

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