「偉大なる失敗」マリオ・リヴィオ著 早川書房 ― 2015/04/05 17:48
ダーウィンやアインシュタインなど天才と呼ばれる科学者たちの業績をたどりながら、彼らにも失敗があり、その失敗がその後の科学の発展に貢献したという事がよくわかるユニークな視点からの科学書。
本書が素晴らしいのは、1800年代から1900年代初期にかけての科学者たちの業績が相互に関連しながら、お互いに刺激を受けて発展してきたというスケールの大きな視点から捉えている点である。
例えば、ダーウィンの生物進化の考え方と地球の年齢、さらには宇宙の年齢に関する考察の関連性である。進化に必要な時間がどの程度かという視点で地球の年齢に関するケルヴィンの研究がダーウィンの「種の起源」にも登場し影響を与えていることがわかる。
また、DNAの分子構造の発見やたんぱく質の構造解析、メンデルの遺伝学との関連。
そして、この生命の材料としての元素の誕生に関わる重要な発見をしたフレッド・ホイル。
さらには、宇宙の年齢にかかわるあの有名な宇宙定数を考案しながら、静的宇宙を提唱し、ハッブルによって膨張する宇宙が発見されてもそれを変えなかったアインシュタイン。
などなど当時の研究成果がいかに相互に関連しあっていたのかがよくわかる。
もう一つ本書のテーマは、地球は宇宙の中心ではないとする「コペルニクス原理」と、人間が進化できるように宇宙の性質が決まっているという「人間原理」である。
著者は、前者の立場で、天才たちの失敗をも包含してこう述べている。
「人間は、感情を完全にオフにできる純粋に理性的な生き物ではない。私が本書で描いてきた5人の人物は、…過ちを犯したからこそ、各々の科学分野の中で革新を巻き起こした。」
我々に多くの知識を与えてくれる科学的業績は、多くの「失敗」を経たからこそ得られてきたものだ、ということがよくわかる。
とても刺激的な本である。
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://takokakuta.asablo.jp/blog/2015/04/05/7604941/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。