「スーパーパワー」イアン・ブレマー著 日本経済新聞出版社2016/03/21 09:13

現代の国際情勢を「Gゼロ時代」という言葉でうまく言い当てたブレマーの新作。
本書は副題にあるとおりGゼロ時代のアメリカの選択肢をいくつか提起し、読者に考えさせる仕掛けとなっている。
丁度今、大統領選挙で注目されているアメリカの行方を探る上でも重要な著作である。

冒頭でいきなり、アメリカの外交政策に関する10の質問を読者に投げかける。
その上で、3つのアメリカの外交モデルを提起する構成となっている。

まずは、「独立するアメリカ」、国益を優先し安全と自由を確保することにとどめるという政策である。ここでは、アメリカ国民が稼いだお金をできるだけ多く国内政策に振り向け、外交政策からの独立を宣言する。いわゆるモンロー主義への回帰である。

続いて、「マネーボール・アメリカ」。ここでは、納税者の投資に対するリターンを最大化するために世界におけるアメリカの役割を定義し直すというものである。TPPに見られるように、世界の貿易・投資の枠組みをアメリカの国益にかない、国内の経済成長の可能性を高めるように再構成する。過去に見られたようなアメリカの価値観を他国に押し付けることはせずに、経済利益を優先するというものである。

そして、「必要不可欠なアメリカ」。ここでは、引き続き民主主義と市場経済への信頼を確保するために、これらの価値観のために引き続き取り組んでいくというものである。

以上を踏まえて、近未来に起こり得るシナリオをいくつか提起した上で、ルーズベルトの次の言葉を示し、暗に現在のアメリカの政策を批判する。
「およそ決断を要するときにあなたにできる最も良いことは正しいことであり、その次に良いことは間違ったことであり、最もいけないのは何もしないことだ。」

最後に、著者の考えを述べている。
著者の選択は、「独立するアメリカ」である。

本書は、今のアメリカの国民の価値観をよく述べていると言わざるをえない。

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