「日本の中小企業」関満博著 中公新書2018/02/27 13:52


多くの中小企業の企業現場を観察し、現在の中小企業の課題である起業、承継について具体的な事例をもとに、日本の中小企業の課題と方向性を述べた力作である。本書は大きく分けて二つのテーマから構成されている。

まず起業である。著者は経済や社会構造の変化の中で生まれた新たな事業領域として、医療福祉系の事業所の増加傾向を挙げているが、介護保険制度と補助金による部分が大きく市場競争による事業展開とは言い難いと指摘する。一方で注目される動きとしてITと農業に関連する動きに注目している。

次に、事業承継である。一つは最も多い家族承継であるが、著者は経営者としてのあり方を学ぶ機会が乏しい状況で、若い経営者や後継者が互いに磨くことを期待し私塾を開催しているという。加えて受け継ぐ事業は一つ前の時代に対応した場合が多く、全体として縮小に身を委ねていると厳しい。その上で新たな時代に適合した事業を想像していくような取り組みが要求されるとする。

さらに、従業員などの第三者承継における個人保証の問題が一番大きいと指摘し、金融機関は将来の事業可能性と引き継ぐ経営者の資質を見極め個人保証は取らないという方向に舵を切っていくべきであるとする。

まさに多くの中小企業の現場を歩いてきた著者だから言える言葉が多く散りばめられており、説得力のある著作である。

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