「幻の惑星ヴァルカン」トマス・レヴェンソン著 亜紀書房2018/02/28 08:44

本書はニュートン力学によって水星の軌道のずれから精緻に計算され予測されたヴァルカンという惑星がアインシュタインによって否定されるまでを描いた物語である。
こう書くとあまり面白みのない話になってしまうと思いそうだが、なかなかどうして読み物としても場面描写が一級品だし、それ以上に科学とな何かを考えさせられる作品である。

まずはニュートンによる惑星軌道についての見事な計算からはじまり、その後のラプラスによる木星と土星の重力の相互作用による動きへのアプローチ。
そして、ルヴェリエによる天皇制の動きから予測した海王星の発見。
さらに、その延長線上に水星の動きから予測されたヴァルカンの可能性。
これらは、いずれもニュートンの法則に則って計算されたものであった。

ところが、この惑星ヴァルカンは、何人もの観測者が発見したと言っては、検証できない時間だけが過ぎていった。
そこに現れたのがアインシュタインである。と言ってもアインシュタインも水星軌道についての計算は相当な苦労が伴っていたらしい。
それにしても特殊相対性理論の正しさを立証する見事な発表であったのは間違いない。

本書の主題は、最新のインフレーション理論による重力波の予測とその観測結果の発見の発表とその分析結果の誤りの指摘を例に、「実験が全てに優先する」「観測が決断を下す」ということである。

まさに、惑星ヴァルカンの物語は科学の本質をよくとらえているといえる。

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