「ゲノムで社会の謎を解く」ダルトン・コリー、ジェイソン・フレッチャー著 作品社2018/05/12 08:45

★★☆☆☆

本書は、社会学の立場から遺伝学との関連を述べたユニークなアプローチをしたものである。

本書の起点となる考え方は、クリスパーに見られるように遺伝子操作が容易になっていくと(著者はオーダーメイド医療と名付けている)、社会にはどのような影響があるのか、ということである。

その意味で、エピローグにある100年後の未来を想定した社会の姿が参考になる。
この世界では、体外受精により作られた胚32個の遺伝子から、病気、身長、IQなどを予測し、親がどれにするか選択できる。
ガンは遺伝子改変によって治療できるようになり、遺伝子組み換えにより食糧増産や主要作物の栄養価も改善され、遺伝子型による結婚相手を探すマッチングが行われ、学校の入学選考も遺伝子スクリーニングによって行われる。この世界ではIQの最大化が最も重視される。

本書の前半では、すでに進む社会的不平等化、国家間の経済格差の固定化などとの関連について検討を加える。

多くはまだ答えを見つけられてはいないものの、急速に進む遺伝子革命によるこれからの社会への影響の大きさを考えたとき、本書が提示する問題は重要であることがよくわかる。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://takokakuta.asablo.jp/blog/2018/05/12/8849573/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。