「小石、地球の来歴を語る」ヤン・ザラシーヴィッチ著 みすず書房2012/07/29 16:43

身近な小石を題材に、宇宙の始まりから、太陽系の誕生、地球と月の誕生、大陸移動、生命の誕生、そして人類誕生までの壮大な物語を描いたユニークな本。

現代科学の粋を集めて、その年代測定に使われる様々な手法も紹介される。
たとえば、
・ジルコンという美しい結晶に閉じ込められたウランとその生成物の鉛の量から測定する小石の生成年代。
・小石を溶かした後に現れる美しいシルル紀の微化石たち(その正体は未だに不明)。
・また、著者の専門分野である筆石というとても小さな鋸の歯のような化石。これは、史準化石として年代測定に使われているものではあるが、これもどのような生物であったのかはまったくの謎。
・このほか、ネオジム同位体によるマントルから解放された年代、レミウムとオスミウムによる海底堆積の年代、雲母の結晶中の放射性カリウムから造山運動の年代などのほか実に10種類以上の年代測定の指標がある上に、最近では宇宙線照射による年代測定や原爆実験、チェルノブイリ、そして福島の原発事故による世界中にまき散らされた人工の放射線が、今後の年代測定指標になるという。

さらに、人間が地球環境に与える影響についても懸念を示す。
たとえば、農地にまかれる化学肥料が海に流れ出し、プランクトンの大量発生により酸欠海域が発生している点も興味深い。

そして著者は、小石を使ってこれからの未来にも思いをはせる。
それは数億年というわれわれには永遠ともとれる壮大な時間である。
これ位の時間単位でものを考えると、岩石や大陸など安定して永久に変わらないと思われるほとんどすべてのものが、そのままの形ではありえないということにあらためて気づかされる。

どこにでも転がっている何の変哲もない小石の中に、我々の想像を超える遥かな過去の情報がたくさん詰まっているということに、新鮮な感動を覚えた。

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