「電力と政治」上川龍之進著 勁草書房2018/06/05 09:09

政治学の立場から原発事故以降の政治の対応を時系列に辿ることにより、原発政策がなぜ変わることができないのか、深く切り込んだ好著。

本書においては、特に終章「時間のなかの電力・エネルギー政策」が秀逸である。
すなわち、まず福島第一原発事故のタイミングに注目する。
それは、民主党が政権を取っていたということであり、その影響をいくつかあげている。まずもともと電力会社と深い関係を築いて原発を推進してきた自民党が、事故の時点で野党であったことがその後の政治過程に重大な影響をもたらした。このため危機管理体制の不備や事故対応の不備まで民主党に責任追及の矛先が向けられた。
また、仮に自民党政権であった場合、 政府の東電への対応がさらに甘いものになっていた可能性があるし、さらに、独立性の高い原子力規制委員会が設置されることはなかった可能性があるという。
さらに、電力システム改革についてもこのタイミングが、結果として民主党政権だったために、電力システム改革が打ち出され、実行されていったという。

そして、原子力発電の政策放置が、結果として今後原発の新増設は住民の反対により困難を極め、さらに電力自由化が進み、原発の新設は割に合わなくなる。結果として、遅くとも泊原発が運転60年を迎える2069年には、政権の意図に反して原発ゼロが実現すると予測する。 これが最も現実的な原発ゼロ政策であると著者は結論づけている。

実に日本的な政策実現の方法である。

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