「新しい世界史へ」羽田正著 岩波新書 ― 2012/01/08 15:19
本書は、表題のとおり、今までの日本の世界史には色々な問題があるとして、「新たな世界史」のフレームワークを提言するものである。
その意味するところはよくわかる。
この国の世界史の問題点は大きく二つであるとする。
一つは、ヨーロッパと非ヨーロッパという二項対立的な概念。
そして、もう一つは時系列的な切り口である。
その上で、著者が提言するのは3つの視点である。
すなわち、(1)ある時期の集団を比較して世界の見取り図を描く、
(2)時系列史にこだわらない、
(3)横につなぐ歴史を意識する。
著者がこのような世界史を提言するきっかけは、ジャレドダイアモンドの歴史観と著者の主たる研究分野であるイスラム世界への独特のとらえ方であるという。
私も、ダイアモンドの人種(類人猿さえも)にとらわれない水平感覚には大いに刺激を受けたし、著者が披露しているバタヴィアでのオランダ植民地時代への嫌悪感は大航海時時代の歴史書でもよく触れられている。
むしろ、日本のヨーロッパ文化への憧景ともいえる独特な感覚こそが、異文化を積極的に受け入れてそれをうまく消化してきたのではないかとも思う。
いずれにせよ、著者の提示する「新しい世界史」の作業はこれからである。
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