「隷属なき道」ルトガー・ブレグマン著 文藝春秋2018/04/08 06:30

★★★☆☆

AIとロボット化が進んでいく近未来に、どのようなことが起こるかを予測し、処方箋を示した本。すなわち機械への隷属なき道を描いた著作である。

本書によればAIとロボット化が進んでいくと、労働対資本の比率が逆転し労働者への給与の国民所得に占める割合が減少し、生産者が一人勝ちする社会になっていく。ロボットにより生産性は飛躍的に高まっているが、同時に雇用が減少し平均収入が落ちている。AIとロボットが駐留と呼ばれる人々の仕事を奪っていくのである。

これらの減少に対する処方箋は、ベーシックインカムと労働時間の短縮である。
現実に事例を示しそのプラスの効果を示している。フリーマネーの支給が、犯罪、小児死亡率、栄養失調などの減少につながり、成績向上、経済成長、男女平等の改善をもたらしているとする。

また著者の主張で興味深いのは、GDPの欠陥について指摘し、むしろそこに現れない生産性のみ着目するのではなく、医療や教育など時間をかけて高齢者の面倒を見たり個々人にあった教育をしたりすることに価値を見出すような指標の必要性を訴えている。

今日本の企業の業績は絶好調だが、残念なことに労働者への還元はほとんどされていない。本書のような主張が新たな時代には必要だと感じる。