「資本主義と死の欲動」G・ドスタレール、B・マリス著 藤原書店2018/04/23 13:36

★★★☆☆

本書は、リーマンショックの翌年フランスで出版された著作である。フロイトとケインズという副題がついているとおり、資本主義について心理学からのアプローチをしたものである。

その内容は、興味深い。
すなわち、「資本主義とは、技術と科学が過剰な労働生産性へと誘導される人類史の特殊な時期である。この時期には、商品の生産を増大することが欲求に見合うものとされ、商品の生産が限りなく追求され、貨幣もまた、もっぱらより多くの貨幣を蓄積するのに役立ち、自己目的化する。それゆえ、資本主義という時代は、物的財を蓄積し時間を節約する以外の目的を持たない。時間を節約するということは、生産性を上昇させるという意味である。…貨幣は、人類のあらゆる苦悩と欲動を抱え込んでいる。人類は、経済成長、財と廃棄物の蓄積、自然の破壊といったものの激しい渦へと引き込まれているからである。」

そして中国については、
「新しいモンスターが現れた。中国である。…迷うことなく独裁的で、ジェノサイドの体制を支え、権力の意志を満たすため河の流れを迂回させたり、都市および工場を移動させようとする。」

また、債務についての概念も興味深い。
「貨幣の一般化によって、債務を抽象化することが可能になり、その債務の抽象化が人々を人格的な紐帯から解放する。債務は移転可能なものとなり、流通しうるものとなる。これこそ貨幣経済の本質そのものである。資本主義は平等主義的なシステムを考案したが、このシステムにおいては、個人が次第に誰に対しても責務を負わなくなる。それゆえ、市場は債務を抽象化し、債務を移転可能なものにし、債務を清算する抜群のシステムである。」

最後にこう述べる。
「気がかりなのは、人類が資本主義よりも前に絶滅するのではないか、ということである。われわれに目を開くよう助けてくれたコンドルセ、ケインズ、フロイトは、一体どこにいるのだろうか。」

資本主義の本質をよく捉えた秀作である。