「消費資本主義」ジェフリー・ミラー著 勁草書房2018/04/29 05:39

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現代社会の消費社会を冷静に分析し、そこから抜け出すために我々はどのように行動したら良いか、提言する本。
非常に多方面から分析し、特に生物学的分析や、心理学からのアプローチなどは注目に値する。
逆説的に言えば、マーケティングに携わる立場からも参考になる書籍である。

すなわち、(1)私たちが消費で見せびらかそうとしているのは富や地位というより、資質・適応度である。(2)そうした見せびらかしの欲求に対して、現代社会ではマーケティングが猛威を振るい、あたかもその商品・サービスによって、資質を他人に宣伝できるかのように人々に思わせている。
というのが本書の主題である。

それら、見せびらかしの対象となる資質の中でも消費行動を理解するための最重要項目として、知性と5つの性格特徴(開放性、堅実性、同調性、安定性、外向性)をあげ、それぞれの項目がどう我々の消費行動に絡んでくるか詳細に述べている。

以上を踏まえて、個人でできる消費主義に頼らないための方法について提言している。
それは、拒絶戦略、小売店で買い物する以外の選択肢、買わずに済ます、すでに持っているものを見つける、友人や親戚やご近所さんから借りる、有料で借りる、中古で買う、ノンブランドや複製品や普及品を手に入れる、自作する、地域の職人に発注する、新しい技術の製品が登場しても買わずに3年間様子見してみる、贈り物にしてもらえないかお願いしてみる、大半の公理製品に織り込み済みのプレミアム価格を認める、
などをあげ、次のように述べる。
「見せびらかし消費は、心理的な特徴を他人に見せびらかす方法としては無駄が多くて効果が薄い。ほんの数分もくだけた対人的なやりとりをすれば、そうした特徴はかなり正確に品定めできる。」

また、累進的消費税を提案しており、「人々は買い物を減らし物をもっと使い回し、再利用するようになる。モノをもっと堅実に手入れと修理をしながら維持して買い替え回数を減らす動機ができる。」とする。

異論の多い提案になりそうだが、現代の消費社会への一つの警鐘と捉えることはできる。
もう一度言うが、本書は緻密にマーケティングについて観察している。逆説的ではあるがマーケティング戦略にも使える著作である。