「反脆弱性」ナシーム・ニコラス・タレブ著 ダイヤモンド社2018/04/12 08:11

★★★★☆

ブラックスワンで一世を風靡した著者の最新作。
さらにその考え方は進化し、今までの常識が覆される著者独特の不確実性への答えである。

本書において著者が提示する「反脆弱性」とは、脆さの反対概念で、丁度生物が単体では有限であるにもかかわらず、種としては適者生存やランダムな突然変異によって環境変化に対応していくような概念をいう。

これを広げて、例えば試行錯誤を繰り返して解決に近づいていく方法を示し、タイタニックやフクシマの事故の問題点を例示している。

一方で、現在の経済システムは反脆さはないと断言する。
また、中央集権的な国家にも問題点が多いと指摘する。
ここで、著者はスイスの高度な自治制度を紹介している。
次の言葉が印象に残る。
「国民国家の誕生は、まさにその力が卑しい人間の手に渡ったことを示している。
そして、人間の過ちが集中し拡大するようになったことを示している。
現代性は国家が暴力を負うことで幕を開け、財政の無責任を負うことで幕を下ろそうとしている。」

また、企業の合併についてこう述べる。
「ビジネススクールでは規模の経済性について教わるが、ストレスがかかると規模はかえってあだになる。規模によるメリットは目に見えるがリスクは見えない。そして隠れたリスクが企業に脆さをもたらす。」
「今日の巨大企業は消滅するはずだ。巨大企業は自分では強みだと思っている規模によって常に衰退させられてきたからだ。都市国家や小企業の方が生き残り成長する可能性は高い。」

サプライチェーンの問題点も鋭く指摘する。
「現代では、複雑性、部品同士の相互依存性、グローバル化、効率性のせいで必然的にブラックスワンの影響は増している。1箇所で問題が起きるとプロジェクト全体がストップする。つまり鎖全体で一番弱いつなぎ目がそのプロジェクトの強度ということになる。」

さらに、「グローバル化によって文化の伝染は地球規模になった。その結果害は加速している。子供たちはみんなハリーポッターを読み、フェイスブックに参加している。同じように大人たちは金持ちになるとみんな同じ活動をし、同じものを買い始める。その結果観光地は耐え難い場所になりつつある。」

反脆弱性こそ、脆さを増しつつある現代社会への答えになる概念であると感じる。